冬の蔵王へ雪山登山に行ってきました。
お目当てはもちろん樹氷・スノーモンスター。2022年は寒波の影響もあって、例年以上に巨大な樹氷に成長!3月でも迫力抜群の壮観な光景が広がっていました。
今回は電車・バスの公共交通利用を活かして、ライザワールドスキー場から蔵王温泉へと縦走するルートで歩きました。このコース、双方の世界観の違う樹氷原を堪能できるので、猛烈におすすめです。
3度目の冬の蔵王へ。
前回訪れたのが2015年なので、実に7年ぶり。あの時、奇跡的な青空の元で見れた樹氷風景が忘れられず、ここ数年はずっと再訪したいという思いに駆られてました。
チャンスが巡ってきたのが今年の3月初旬。久しぶりの平日休みと山形県のお天気マークが重なり、半ば強行の東北遠征を即決。
これが実は今シーズン初の雪山登山ということもあり、久しぶりの冬靴とスノーシューの重さに若干の嫌気が差しましたが、前回にも勝る素晴らしい景色に出会えました。
準備は面倒だけど行ってみたらやっぱり最高、それが冬の雪山登山。
2022年3月4日 蔵王 雪山登山
今年最初の東北遠征。
冬の蔵王は公共交通機関でもアクセスが良く、都内からも朝発で登れて、しかも事前のバス予約なども不要。
調べてみたら、意外と西吾妻山よりも登りやすいことがわかったのは新しい発見でした。
公共交通で行くので、できることなら登山口と下山口を変えて縦走したい。
そんな思いを蔵王は素敵に叶えてくれます。
今回はライザワールドスキー場から登って蔵王温泉スキー場へと下山することにしたので、やってきたのはかみのやま温泉駅。
冬の時期は、ここからライザワールドスキー場までの無料シャトルバスが出ています。その名も「ホワイトエコー号」。
事前予約不要で無料というのがなんとも素晴らしい!9時台に1便しか出ないので、それに乗る必要があります。
平日なので余裕で乗れるだろうと思ってましたが、実際はちょうど満車という盛況っぷり(危なかった……)。ほとんどがスノーボーダーでした。
先着順なので混んでいる週末は満員で乗れない、なんてこともあるかもしれないので、早めにバス停に並んでおきましょう。観光案内所の前にバス停があります。
バスに乗ること30分。朝の10時前に蔵王ライザワールドスキー場に到着。
過去2回、いずれもこのスキー場から登ったので少しだけ懐かしさを感じます。
小さいスキー場で、平日というのもあってゲレンデはかなり空いてました。
そして見ての通り、絶望的なまでのガスっぷり……(おい、天気予報!)
雪も降ってきて、ゲレンデ周りの霧氷がとても綺麗でしたが、これでは登る気も起きない……。
更衣室でゆっくり着替えつつ、レストハウスでしばし待ちます。
スタート地点がスキー場の場合、いくらでも時間を潰せるのはいいところですね。
ここからリフトを2回乗り継ぐことになるので、2回分の券を購入しておきます。
今回はもうこのゲレンデに戻ってこないですが、戻ってきたとしても下山はリフトを使えないので、帰りの分のチケットは不要です。
空が晴れてきたのは11時半頃。
結局、ゲレンデに到着してから2時間近く経ってのスタートとなりました。
蔵王温泉までの縦走コースも4時間あれば余裕で歩ける距離なので、この時間でもまぁ問題なし。
過去にないくらいのんびりした雪山登山のスタート。
リフトを使って楽に標高を稼ぎます。
1本目のリフトを降りて、隣のゲレンデトップへと続くペアリフトへ移動。
ゲレンデはフカフカのパウダースノー。
客も少なく、滑ったらさぞ気持ちよさそうな斜面が広がっていました。
そして遥か遠くにスノーモンスターらしき白い影が見えておる。
2本目のリフトに乗車。
樹氷最盛期の場合、実はこの2本目のリフトが最大の山場かもしれません。
中盤からの景色の変貌っぷりが凄まじいことになるので、目をカッと見開いて前方を注視しておきましょう。
おっ!?
うぉぉ!!?
おぉーー!!
突如、リフトの脇に現れた巨大な樹氷たち。リフトの高さを悠に超える巨大な雪の造形、これぞまさにスノーモンスター(アイスモンスター)!
手の届きそうなほど近くにまで迫っているのが、また何とも言えない迫力。
まだ登山スタートもしていないのに、すでにこの景色です。座っているだけで遊覧できるんだから、こりゃ最高の贅沢だわ。
進むにつれて樹氷の数も多くなり、遥か奥までモンスターの群れ。
普通だったら山の上まで登らないと見れない景色、それがスキー場の敷地内で見れるんだから、蔵王の樹氷はやはり日本屈指のスケールです。
7年前も感動したけど、やっぱりここはスキー場からすでにハイライト。
樹氷の背丈で言えば、このリフトから眺めるモンスターが実は随一だったりもするので、リフトからの景色は存分に期待してください。
乗る前にカメラのご用意を忘れずに。
こうしてゲレンデトップに到着。
ここからいよいよ登山開始になるわけですが、降りた場所の景色もまたすごい。
降りたところがライザワールドの樹氷原。
遥か奥まで、どこまでも続くモンスターの群れという群れが凄まじい景色!
ゲレンデ客も思わず立ち止まってしまう景色がリフトを降りたところに用意されています。
人の大きさと比べるとこれくらい。
ゲレンデに近いほど樹氷は大きく、登るにつれて背丈は小さくなっていくので、ここは焦って登らず、しばらく樹氷原を散策してみるのもよし。
中〜大サイズのスノーモンスターがそこら中に立ち並ぶ絶景。
後々、蔵王温泉側の樹氷も見ることになりますが、歩いて鑑賞する分にはライザ側の方が自由度が高いので、スノーシューハイクならこちらが断然おすすめ。
蔵王温泉側はロープウェイから見下ろす景色が凄かった。
のんびりと山頂方面に向けて歩き出す。
青空もだいぶ広がってくれて、照りつける太陽と真っ白い雪が眩しかったです。
同じタイミングで歩き始めた登山客がいなかったので、ゲレンデを少し離れたら静かなもんでした。
序盤は道が明瞭なので、迷うこともないかと思います
見下ろすように立ちはだかる巨大なモンスター。
そのすぐ横に敷かれた登山道を登っていきます。
一応、樹氷狩りということでスノーシュー履いたけど、ここら辺は道もしっかり締まっていたので、履かなくても特に問題ないコンディションでした。
冬の蔵王に広がる樹氷・スノーモンスターの森
う〜ん、やっぱり蔵王の樹氷は格別だわ。
同じ東北の西吾妻山も何回か登ってるけど、1つ1つのモンスターの大きさで言うとやっぱり蔵王かな。
見上げるほどの巨大な雪の塊。1日でも暖かい日があると崩れ去ってしまうのもスノーモンスター。こうして3月でもしっかり残っているのを見ると、今年の冬の寒さと降雪量の多さを改めて感じます。(都内でも雪降ったし)
ある程度登ると、広大な雪原エリアに出て道も平坦になります。
所々に立てられたポールが道しるべ。
樹氷の背丈も小さくなって、先程までとはまた違った世界観。
子どもサイズのミニモンスターがそこら中にいます。こいつらとなら、戦ってもいい勝負になりそう。
スキー場のゲレンデと見間違えるほどの、広大な雪原エリア。
ここら辺はガスっていると非常に迷いやすいポイントなのでご注意ください。
私も最初に冬の蔵王を訪れた時はほとんどガスっていて展望もなく、こんなに広い場所を歩いていると知ったのは2回目に来た時でした。
雪原エリアを越えると、そこに広がるのはさらに広大な雪原エリア。
ここら辺まで来るとスノーモンスターもほとんどなくなって、ただただ広い空と雪面の景色になります。
右奥にちょこっと突き出たところが、目指す刈田岳の山頂。
近くまで行かないとわからないですが、雪原の中に避難小屋が一軒あります。
朝日や夕日に染まる樹氷を見たいならここを利用する手もありますが、寒いのが苦手な自分には多分無理。
何もない、広大な雪の平原。
蔵王を1つの山と括るには、あまりにも大きすぎるその懐。
アルプスとはまた違ったスケール感、東北の山の魅力だと思います。
雪原の中にあったのが、県境の看板。
ちょうど山形県と宮城県の境目です。
この標識も、雪がない時期には見上げる場所にあるんでしょうが、今はほぼ雪に埋まった状態でした。
山頂が近づいてくると次に見えてくるのが、かつて動いていたであろうリフトの残骸。
毎度、地面から突き上げられた拳のように見える。
ロープだけはいまだに張らせた状態で残る雪の廃墟。
巨大な雪のモニュメントとして、これもまた不思議な景観を創り出していました。
樹氷の森は遥か遠く。
黒々とした木を一切見かけないのが凄い。
稜線に到着。
と、同時に見えてくるのが、蔵王のシンボルとも言えるあの大火口。
蔵王の御釜。
夏にはエメラルドグリーンに輝くその水面も今は一面凍結して、さながらスケートリンク。
熊野岳方面へ縦走するとさらに間近で見れるようになりますが、まずは後方の刈田岳へ。
こちら。
ここからだとわかりづらいですが、あの山頂にも面白いものが待っています。
こちらが刈田岳山頂。
見ての通り、山頂の鳥居がガッツリ凍って摩訶不思議な姿に。鳥居でさえ巨大なスノーモンスターと化すのが厳冬期の蔵王。
背後の雪で覆われた社の屋根もカッコ良い。
こちらは南側の展望。
直近の蔵王は、4年前の6月に不忘山から縦走したのが記憶に新しく、あの稜線を歩いてここまで来ました。
ハクサンイチゲ咲く高山植物の宝庫だったので、夏の蔵王もおすすめです。
刈田岳山頂から眺める熊野岳と御釜。
夏の景色を知っているからこそ、その景色の対比が面白い。
夏の蔵王の御釜(夏の蔵王連峰縦走登山より)
何度も写真に撮ってしまう巨大な氷の鳥居。
初めて見た時も驚いたけど、やっぱり迫力あるし面白い姿だわ。これもまた、冬の蔵王の1つの名物です。
今後も冬の蔵王へ登りに来るとすると、この鳥居の大きさがその年の降雪量の指標になるかもしれません。
ここからは稜線を歩いて向こうの熊野岳へと向かいます。
一見すると熊野岳が山っぽく見えないですが、反対側から見るとだいぶ印象が違うのがまた面白いところです。
刈田岳山頂直下のレストハウスも凍りつく。
そして建物の前には、また不思議な形をしたモンスター。
雪の造形、1つ1つに見入ってしまう。
平坦で横に広い稜線を歩いていく。
夏場は遊歩道にもなっている道。危険なところはないですが、実際のところはかなりハードな山行で、この時はとにかく風が強かった……。
突風が吹き付けて、顔を露出していると凍傷になりそうなほどの寒さでした。
もはやエビのしっぽというにはデカすぎる物体。
冬の蔵王がいかに厳しい環境下にあるか、それを物語っています。
強風で巻き上げられた氷の粒が顔に当たって、痛ぇ、痛ぇ、言いながら進む。。
振り返って見る刈田岳。
稜線あたりですれ違う人も出てきたあたり、冬の蔵王はライザよりも蔵王温泉から登る人がやっぱり多いようです。
登山を主軸で考えるなら、個人的にはライザの方をお勧めしたいところです。
北側から眺める御釜。先ほどよりも、より間近にその火口湖を見ることができます。
雲の影が良い演出で、なんかクリーミーな感じ。
写真では伝わらないけど、ここら辺はもうとにかく風が強くて、顔もろくに上げれず黙々と前に進んでいた。
斜面もカリッカリで、スノーシューよりもアイゼンが欲しいような雪面でした。
そんなこんなで到着したのが熊野岳。
蔵王連峰の最高峰がこの山になります。
強風吹き荒れる蔵王の稜線。
晴れている写真ばかり載せていますが、実際のところは雲の流れがすごい早くて、一時的にガスったりもしました。
熊野岳の奥に見えたのが地蔵山。あの山の裏側に蔵王温泉スキー場のロープウェイがあります。
こんもりした山で、あの山も特に危険箇所はなし。いったん下って登り返します。
横を見ると、一際輝く白い稜線がありました。
標高低いのに北アルプス並みに真っ白。なんだ、あそこは!惹かれるじゃないかっ!
下ってから振り返って見ると、熊野岳の全貌がよくわかる。
刈田岳方面からはわからなかったですが、北側斜面は大きく切れ落ちていて断崖絶壁になっています。
蔵王温泉からスタートする場合はこの斜面を登ることになりますが、登山道自体は特に危険なところはありません。
ただ風が強いだけ。
ここら辺も吹き飛ばされそうなほどの強風で、ロープウェイ止まっているんじゃないかって心配もしましたが、なんてことはない。
風が強かったのは稜線の上だけでした。
地蔵山に到着。
過去2回の冬の蔵王登山では熊野岳でライザに引き返したので、雪の時期にこの山に来たのは今回が初めてです。
蔵王ロープウェイの山頂駅がここで初めて見えました。
時刻はもう間も無く15時。16時過ぎまでロープウェイは動いているので、ここまでくればもう大丈夫。
ゆっくり下山します。
地蔵山から眺める熊野岳。
ここから眺めるとだいぶ印象が違う。
この日に見れた景色の中では、これが一番雪山らしい山岳感ありました。
ロープウェイあたりまで下りてくると、再びフィールドは樹氷ゾーンへ。
スノーモンスターたちのお出迎えが待ってました。
こちらは蔵王温泉側の樹氷原。
モンスターの密集度はなかなかのものですが、こちらの樹氷はロープウェイから見る景色が真骨頂。
歩いて見て回るには、ちょっとスペースが足りない。ツリーホールに落ちないようにご注意ください。
ロープウェイ乗り場前に鎮座する地蔵尊。
頭だけ出していて体はすっかり雪に埋まってました。夏に一度来ておかないと、これが巨大なお地蔵さんというのもわからないかもしれません。
こんな感じで、実際は背丈以上の大きさのお地蔵様がいらっしゃいます。
「おっ、こんなところに岩がある。よっこいしょ…」とか言って、間違ってもその頭上に座ったりしないように。
蔵王ロープウェイ山頂駅に下山完了。
ゲレンデ客に加えて樹氷がお目当ての観光客も多く、平日でもかなり賑わってました。シーズン中はライトアップもしています。
ここから滑って下山できれば最高なんだけど、流石にそうはいかない。
ロープウェイを2本乗り継いで下山します。
運賃は1500円でした。
このロープウェイに乗ったのは今回が初めてだったのですが、乗ってみてわかった蔵王温泉側の樹氷の凄さが。
ロープウェイから見下ろす樹氷の森がとんでもないことにっ!
同乗していたのは家族連れとソロの男性だったのですが、もうみんな無我夢中で写真を撮りまくってました。
「凄いですね!」「こんな晴れてることなんて滅多にないですよ!」とワイワイキャーキャー。
規模はもちろん、モンスターの密度がとにかく凄い。
なるほど、蔵王温泉側の樹氷のハイライトはロープウェイからの景色だったのか。
見下ろす形になるので、その背丈の高さは感じづらいですが、広い範囲を俯瞰して見れるのがライザにはない特権。
縦走してみてライザ、蔵王温泉、双方の樹氷の魅力をしっかりと感じることができました。
家族連れに写真をお願いされたので撮らせてもらったけど、それはもう最高の1枚が撮れたと自負しております。
こうしてロープウェイを乗り継いで麓の蔵王温泉へ下山完了。
駐車場で翌日登る予定だという方に話しかけられましたが、次の日も午前中は天気が良かったので、さぞいい景色が見れたんじゃないでしょうか。
麓は温泉街なので、当然ながら日帰り温泉も楽しむ。
夏の縦走で一度立ち寄ったことがある「新左衛門の湯」に入りました。日帰り入浴800円。
ゲレンデ客が多いから混んでるかと思いきや、全然空いていて快適でした。
お土産屋も併設されているので、バスまでの時間を潰すこともできます。
蔵王温泉からはバスで山形駅へ。本数は多く1時間に1本はあります。
スキー客に観光客と長蛇の列で乗れるか心配でしたが、臨時便を出してくれたので問題なく帰ることができました。
周りを見たら登山客っぽい人が誰もいなかったのが少し意外。みんな車なんですかね。
3回目の冬の蔵王登山、無事に完了。
ライザスキー場から蔵王温泉へと縦走するルートで組んでみましたが、もう最高でした。公共交通で行くなら、このルートは本当にお勧めです。
スタート早々のリフトから始まる樹氷・スノーモンスターワールド!
登らずしてこの景色が見れるんだから、さすが樹氷のメッカというだけあります。リフトを降りてからも飽きるくらい樹氷を堪能できるので、ライザスキー場だけでもだいぶ満足。
さらに上に登って稜線に出れば、樹氷とはまた景色が一変!世界観がガラリと変わり、火山特有の荒々しい大火口と広大な稜線が待っています。
雪山登山としての面白さも大いにある冬の蔵王。
全体的に道が広いのでガスった時の道迷いは要注意ですが、傾斜は緩やかで滑落の危険などもほとんどないので、晴れてさえいれば安心して登れます。
ピッケル・アイゼンよりもストック・スノーシューが役立つフィールド。
電車・バスでも意外とアクセスが良いことを発見したので、これはまた晴れた日に登りに行きたいと思います。
【日程】
2022年3月4に
【コースタイム】
11:30 ライザワールドスキー場
11:45 ゲレンデトップ
13:20 刈田岳
14:15 熊野岳
15:00 蔵王温泉ロープウェイ山頂駅
コメント
いつも楽しみに読ませていただいています。
こちらは、前泊で行かれたのでしょうか?
参考に教えていただけないでしょうか。
宜しくお願いします。
こうさん
コメントありがとうございます。
前泊ではなく朝発で行きました。シャトルバスの時間が9時過ぎなので、都内でも始発便で間に合う時間でした。
良ければ参考にしてください。
ありがとうございます。
かみのやま温泉は新幹線の駅なんですね!
電車バズで日帰りができるのすごいですね。ぜひ参考にさせていただきます!