八ヶ岳の御小屋山~阿弥陀岳~赤岳を美濃戸口から周回登山してきました。
7月ということで下山時のアブの猛攻も凄かったですが、雲海の果てに広がるアルプスの山なみが絶景で、稜線上にはコマクサも咲いて夏山を満喫できた1日でした。
アクセスは久しぶりに夜行バス(毎日アルペン号)を利用して、下山後は茅野駅から電車で帰りました。
2025年7月12日【八ヶ岳】阿弥陀岳~赤岳 夏の日帰り縦走登山
久しぶりに夏の八ヶ岳へ。
土曜日だけしか時間が取れないので日帰りですが、夜発が可能だったので何年振りかの毎日アルペン号を使ってみました。キャンセル料が高いので長らく利用してなかったですが、晴れを信じて3日前に予約。
竹橋駅からのバスも久しぶりな感じでした。
夜行バスに乗って朝の4時半過ぎに美濃戸口に到着。7月だとこの時間でもすでに明るいです。
駐車場がすでに満車状態で、マイカー組も合わせて八ヶ岳山荘前では多くの人が出発の準備をしてました。
トイレや待合室に自販機がある他、表の水道から水も汲めます。
ところで、7月~8月にかけての南八ヶ岳はアブが有名。
自分はこの時期の経験がないのでどんなものかわからなかったんですが、他の方の体験談によると本当に凄まじいそうで登頂を断念する人もいるとか。
昔に買ったパーフェクトローションが家で眠っていたので、気休め程度にこれをふんだんに振りかけておきました。
美濃戸口から登山開始。
今回は阿弥陀岳に直接登る御小屋尾根ルートで行くため、こちらの分岐を右へと進んで行きます。
20分くらいは舗装路歩きですが、登山口に行くまでに標高100mくらいは稼げます。
道なりに進んで行ったこちらが登山口。
大半の人は最初の分岐を左に美濃戸方面へ行くので、こちらに来る人はわずか。静かなスタートとなりました。
御小屋尾根コースですが、序盤は非常に緩やかな出だしでとても歩きやすいです。
明け方は曇っていたので気温も低め。心配していたアブも朝早かったからなのか、今のところ全く現れず。
特にこのルートはアブが多いらしいので、奴らが動き出す前になるべく標高を稼いでおきたいところ。
御小屋山手前くらいで急登が出てきますが、それも長くはありません。
周りは八ヶ岳らしい苔むす森が広がっております。
登山口から1時間ほど登って御小屋山に到着。
展望はないですが立派な標識が用意されていました。ここまではキツイ登り坂もほとんどなくてとても歩きやすかったです。
そこから先もしばらくは緩やかな道。「こんなんで山頂に着くのか?」というくらいフラットです。
進んで行くと陽が差し始めて木漏れ日の森がまた幻想的でした。
しばらく歩くと不動清水入口という看板を発見。
ここから1分ほど歩いた先にこのルート唯一の水場があります。すぐ近くなので立ち寄っておいて損はないと思います。
こちらが不動清水。一年中枯れないことからその名が付けられてそうです。
確かにドバドバと水が豊富に流れていました。そしてキンキンに冷えていて美味い!
これ以降、行者小屋まで水場はないのでここで存分に水分補給しておきます。
不動清水の先からいよいよ急登に突入。
これまでの緩やかな道から一変して、なかなかの傾斜を登らされます。
体力的にはキツイですが陽が当たらずに涼しかったのが幸い。アブもいまだ現れません。
気温が低かったからなのか何なのか、結果的に登りではアブとの格闘はほとんどせずに済みました。「大したことねぇな~」とか思ってましたが、その猛威を振るったのが下山時の最終盤。あれは確かにヤバかった……。
急登ということは標高もそれだけ早く上がるということで、登るにつれて徐々に展望も開けてきました。
まず見えたのが南側の展望。権現岳と編笠山、その右奥に見えているのは南アルプス。
標高2500mを越えたあたりで森林限界に突入。
依然急登ではあるものの、ここら辺から眺めもどんどん良くなってきます。
後ろを振り返ってみると雲海が広がっており、その果てには北アルプスの山なみも。
写真ではわかりづらいですが、右奥には槍ヶ岳の角もしっかりと見えてました。
登山道脇にはシャクナゲも綺麗に咲いてます。
せっせと蜜を集めるハチが可愛げ。お前もアブに気をつけなはれや。
さらに登って行くと岩場が多くなってきました。
部分的にハシゴやロープが設置された場所もありますが、登る分には足場がしっかりしているのでそこまで危険というわけでもありません。
傍らにはお花畑も広がって、これぞ夏山登山という感じ。
さらに登って阿弥陀岳西ノ肩に到着。
急登が終わり、ここから山頂までは緩やかで面白い岩稜帯が続きます。
右奥が山頂の阿弥陀岳。
そこに至るまでにゴツゴツした巨岩がまたカッコいい。
片側が切れ落ちた絶壁ですが、通行する分には難しいところはありません。
振り返って見ると、なかなかのところを歩いてきたんだなぁ~と実感。
奥に広がる雲海の景色も素晴らしい!
この後、天気は崩れてきてしまうのですが、この時間帯だけでもアルプス全域が見渡せてよかったです。やっぱり夏は朝が勝負っすね。
こちらは横岳と硫黄岳の展望。
ここから見ると壁のように立ちはだかっているのがよく分かります。横岳のゴツゴツした岩峰と丸い硫黄岳のシルエットの対比も面白い。
こうして午前7時50分に阿弥陀岳に登頂。
阿弥陀岳に登頂したのは八ヶ岳初登山となった2011年以来。実に14年ぶりでした。
まず目にしたのは正面に聳える赤岳。あちらが八ヶ岳の最高峰にして主峰。
ここから眺めると北アルプスの穂高連峰にさえ匹敵するんじゃないかってくらい岩の殿堂という出で立ち。赤岳は眺める方角によってだいぶその姿の印象が変わりますが、この阿弥陀岳から眺める姿も素晴らしいですね。
14年前の記憶もほとんどなかったので、新鮮な景色としてみることができました。
こちらは権現岳と編笠山。その奥に見えるのは南アルプス。
八ヶ岳って見た目はコンパクトに収まっているようでも、実際に歩いてみるとそのフィールドは広大。
自分が初めてテント泊登山をしたのも、あの編笠山から権現岳~赤岳~横岳~硫黄岳~天狗岳の縦走でした。今にして思えばテント泊デビュー戦としては無茶だったような気もしますが、あれも懐かしい思い出です。
阿弥陀岳の標識もしっかり納めておきます。
標高2805m。何を隠そう、今年初めて2500mを越えた登山でございます。
本当に久しぶりの阿弥陀岳で記憶もほとんどなかったので、山頂をこれでもかと目に焼き付けておきます。
阿弥陀岳という名前からもわかる通り、石碑が点在する山岳信仰を色濃く残す山です。
7月ともなれば高山植物の開花シーズン。
阿弥陀岳周辺にも色々と花は咲いていて、山頂あたりではこの紫の花が綺麗でした。
花の名前は、、、すいませんがわかりませぬ。花オンチなもので。
北側には硫黄岳の先に天狗岳と蓼科山も見えました。
改めて八ヶ岳のスケールを実感。適度に広くて適度にまとまっている、それが八ヶ岳。
しばらく休憩したのち、赤岳へと向かっていきます。
うん、やっぱりここからの眺めは素晴らしいわ!本当にあなた様は赤岳でしたっけ?というくらい自分の記憶にある赤岳とは印象が違う。
山頂から左右に伸びる岩稜帯がカッコ良すぎます。もしかしたら、ここからの赤岳が一番好きかもしれない。
阿弥陀岳からはいったん急な下り坂。
結構な斜度で、特に下山時は登ってくる人もいるので落石を発生させないよう慎重に。
私みたいな下りが滅法苦手な部類は、こういったところで一気にペースダウンしますがそれも想定の内。登りで稼いだ貯金を下りで使い果たすのが自分流。
しばらく下ってから見上げるとなかなかの岩場。
赤岳に比べると格段に登山者は少なかったですが、この静かな感じが阿弥陀岳の魅力かもしれません。
すれ違う人たちとも挨拶しつつ軽く話したりしますが、この日の午前3時過ぎに美し森から日帰りで登ってるというおじさまもいて、ただただすごいなぁ~と。20年、30年先の自分にもそれだけの体力が欲しい。
鞍部に至るまでのハシゴ。
このハシゴだけはよく覚えています。ビビりな自分はこういう恐怖心を感じたところだけ根強く覚えてるんだなと情けなくもなりますが仕方ない。
一歩一歩慎重に下りましたよ。手すりにつかまった瞬間「熱っ!!」って出鼻くじかれましたが。
鞍部まで下りたところからの赤岳の眺め。
先ほどよりも迫力5割増し。ものすごい威圧感を感じました。
次に目指すのが途中に突き出た岩場の中岳。あそこまでは大した登りもありません。
左手を見ると、眼下に行者小屋が見えました。
八ヶ岳は稜線上にテント場がないのがやや残念ですが、あの行者小屋のロケーションを見るとなんと贅沢なところに建っているのかと思います。
行者小屋を基点に南八ヶ岳を縦走するのも非常にお勧めです。
赤岳~阿弥陀岳の中間にある中岳に到着。
先ほどから若干怪しいなと思ってはいましたが、雲がどんどん湧いてきて薄暗くなる赤岳がちょいと不気味でした。
こちらは阿弥陀岳の展望。
御覧のようになかなかの急峻な山で、よくあの斜度を下りれたなというくらいの急斜面に登山道が伸びています。
登るのは大変ですが、その見た目はこの上なくカッコいい阿弥陀岳。
中岳からはさらに標高を下げて行きます。
アップダウンは体力的にはキツイですが、アブがいないだけマシ。
アブって都市伝説だったの?というくらいこれまでほとんど見かけなかったですが、この数時間に地獄を見ることになりました。
鞍部に到達してからの登り返し。
先ほどまでの雲海がどんどん湧き上がって、赤岳山頂をガスが覆い始めました。
天気予報よりもだいぶ早く天気が崩れてきましたが、一応見たい景色はそれなりに見れたので、ちょちょいと登って下山します。
山頂が近づくにつれて岩場の核心部が出てきました。
そこまで難しいポイントもないですが、部分的に鎖場があったりもするので慎重に。
後ろを振り返ってみると阿弥陀岳の懐に綺麗な三角形の影赤岳が見えました。
こういう偶然見れる自然風景も登山の魅力のひとつですね。
これ以降、阿弥陀岳にも雲がかかってしまい、これが青空の下で見れた最後の景色となりました。
山頂付近になると鎖場が連続して登場します。全然難しくはないですが、見た目は槍ヶ岳の山頂のそれに近い雰囲気。
部分的にプチ渋滞も発生してましたが、自分も大したペースで歩けてないのでのんびり行きます。
こうして午前9時30分に赤岳に到着。
冬の赤岳登山以来、実に8年ぶりの登頂でした。
ガスに包まれてしまったので展望はほとんどなかったですが仕方ない。気温が高くなるにつれて雲が沸き上がるのは、まぁ夏山らしいですね。
山頂でしばらく休憩。
全然関係ないですが、薄皮シリーズってこしあんのあんパンがあったんですね。自分の身近なスーパーはいつも粒あんしか売ってないのですが、たまたま見つけました。
私は昔からこしあん派なんですよ。美味しゅうございました。
山頂のすぐ近くにあるのが赤岳頂上山荘。
八ヶ岳の中では最高のロケーションに建つ山小屋。一度も泊まったことはないですが、この山荘の公式X(Twitter)はよく見させてもらっています。
下山は地蔵尾根経由で行者小屋へ。
まだ時刻は10時前ということで、続々と登山者が雲の下から登ってきます。
展望は残念ながらガスに遮られてますが、ここら辺はぜひ足元にも注意を向けてほしいところ。
登山道の脇にコマクサを発見。
「高山植物の女王」が綺麗に咲いていました。
少し下ったところにあるのが赤岳天望荘。
五右衛門風呂で有名な山小屋ですが、ここ数年はお風呂はやってないそうで2026年から再開予定らしい。
赤岳天望荘の周りにもコマクサの群生がありました。
赤岳周辺にもコマクサってこんなに咲いてたんですね。硫黄岳あたりにしか咲いてないと思ってました。
地蔵の頭に到着。
ここから左へ進んで地蔵尾根を下って行きます。
振り返って見る赤岳。ガスをまとった姿も乙なもので。
そういえばこの日、富士山見てないなとこの辺りで気づきました。地蔵尾根を登ってくると、ちょうどこの場所で左奥に綺麗な富士山を見れるので、晴れた日はぜひご堪能くだされ。
地蔵尾根は一般ルートではありますが、部分的に鎖場やハシゴなどがあるので通行の際はご注意ください。
ガスの奥にうっすらと見えている赤い屋根が目指す行者小屋です。
地蔵尾根を下って行者小屋に到着。
水場もあるのでここで休憩。キンキンに冷えた水が美味しかったです。
赤岳登山の拠点として多くの人が利用する行者小屋。非常に賑わってました。
テント場もあって、今のご時世には珍しく予約不要。週末は場所取り合戦になること間違いなしで、11時の段階でもだいぶ埋まっていました。
行者小屋で面白かったのがこれ。たまにこの吹き出しの写真をSNSで見かけますが、これは行者小屋だったんですね。過去に何度も来てますが、以前にはなかった気が……。
吹き出しのバリエーションは6、7種類くらいあってどれもセンスが秀逸。ここまで来て「赤岳はどれですか?」っていうのもポンコツ具合が効いてて面白い(笑)
行者小屋からは南沢ルートで下って行きます。
下ると言ってもここから先は急登箇所もほとんどなくて、長く緩やかに下って行く感じ。
八ヶ岳らしい苔むす森の中をひたすら歩いていきます。
南沢コースという名の通り、中盤以降は沢と並走するように下って行きます。
清涼感ある雰囲気が最高で、日差しもそれほどなかったので涼しく快適でした。
たまに橋が架けられてますが、一部木が朽ちているところがあったのでそこだけご注意ください。
南沢コースの入り口まで下りて赤岳山荘などがある山小屋エリアに到着。
車の場合はここまで入ってくることができます。バスの自分はここから美濃戸口まで、まだ40分ほどの舗装路歩き。
それでも残りは平坦な林道なので、もうここまで来たら登山も終了という気分でしたが、実際はここからが大変でした。
何が大変かって、忘れていたアブがここに来て猛威を振るって来やがった。
歩いても歩いてもまとわりつくように飛び交ってて、これは確かにキツイわ。最後の最後だから良かったものの、これを登山中にやられたら地獄ですね。。。
腕をブンブン振り回しながら急ぎ目で下山しました。幸い嚙まれずに済みましたが、この時期の八ヶ岳に登る場合は肌の露出は危険。対策していった方がいいです。
アブアタックから逃れるように小走りで美濃戸口に下山完了。すれ違う人、みな大変そうでしたよ……。
八ヶ岳山荘は日帰り入浴可能で、帰りのバスまで2時間あったので風呂でさっぱりしてのんびりしてました。
15時15分の茅野駅行きバスに乗車。乗客は30人ほどで、ちょうど全員座れるくらいでした。
ちなみにこの段階でもアブアタックは続いていて、バスの扉からアブが入ってこないか気になって仕方なかったです。(実際、数匹潜入してきた)
7月の八ヶ岳はやっぱりアブが凄いんだなぁ~と身に染みて感じながら茅野駅から電車に乗って東京へと帰りましたとさ。
八ヶ岳の阿弥陀岳~赤岳へ夏山登山。
日帰りで周回するにはなかなかタフなルートでしたが、この赤岳の姿を拝められただけで大満足です。阿弥陀岳からの景色ってこんなに素晴らしかったんですね。
美濃戸口のバスは週末限定ですが、電車・バスの公共交通でもアクセス可能なので良ければ行ってみてください。
【日程】
2025年7月12日
【コースタイム】
4:50 美濃戸口
5:20 御小屋山ルート登山口
6:10 御小屋山
6:40 不動清水
7:50 阿弥陀岳
8:40 中岳
9:30 赤岳
10:50 行者小屋
13:10 美濃戸口
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