北アルプスの白馬岳~唐松岳を1泊2日で縦走登山してきました。
メインは日本三大キレットの1つである不帰キレット。岩場オンチながら頑張ってきました。
杓子岳で見たご来光や白馬鑓ヶ岳~天狗山荘にかけての雄大な稜線風景、夏の高山植物のお花畑など、変化に富んだコースでとても面白かったです。
八方に下山後は温泉に入って高速バスで東京へと帰りました。
2025年7月30日~31日【北アルプス】白馬三山~唐松岳 不帰キレット縦走登山
栂池高原をスタートして白馬乗鞍岳、小蓮華山に登って白馬山荘までたどり着いたのが1日目。
結構疲れていたのか、消灯の20時を待たずに爆睡して早朝3時ごろに起床。
まだ大部屋のほとんどの方が寝入ってる中で、静かに部屋を退出して山荘入口で出発の準備を整えました。
早朝3時半に白馬山荘をスタート。まだ真っ暗で、ヘッドライトを付けての登山も久しぶり。
この時期のご来光は4時40分くらいで、白馬山荘から1時間ほど先にある杓子岳山頂で日の出を拝む算段で行ってきます。
真っ暗な稜線を杓子岳方面に進んで行く。前後を歩いている人が他にもいたのでそんなに心細くもなく、4時過ぎには空も白み始めてきました。
杓子岳は昔一度登ったことがあるのですが道中の記憶が全くなくて、意外とアップダウンあったんですね。特に山頂までの急登がきつかったです。
4時40分に杓子岳に登頂。
意外と時間がかかってご来光に間に合わないんじゃないかと思いましたが、ギリギリ滑りこめました。
山頂に着いた途端に雲が湧いてきて一時はどうなるかと思ったものの、瞬間的に雲が引いてくれて東の空から待望のご来光!
久しぶりに山から見る朝日、雲海も広がって素晴らしい景色でした。
ただ喜んだのも束の間、すぐに山頂が雲に包まれてガスってしまったのでそそくさと下山して白馬鑓ヶ岳を目指します。今日の行程はまだまだ長い。
杓子岳から一度大きく下ってからの登り返し。
この時間はちょうど山頂部にだけ薄い雲がかかる感じで、空の色彩の変化が幻想的でした。
写真は振り返って見る杓子岳。
山頂目指して登っていると再びガスが流れてくれて白馬鑓ヶ岳の全容がお目見え。
鑓ヶ岳という名前に反して、こちらから見る分には穏やかで丸い山容をしています。
アルプスらしい稜線が気持ち良い。
こうして実に13年ぶりに白馬鑓ヶ岳に登頂。山頂には先客が数名ほど。
すっかりガスが取れて、ここからの景色がそれはもう素晴らしかったです。
こちらはこれから歩く南側の展望。
この先、今回の縦走ルートの核心部である不帰キレットが待ち構えていますが、そこまではもうしばらく緩やかな稜線が続きます。一目でわかる、自分好みの稜線だなと。
右奥に見えているのは立山~剱岳。さらに中央はるか奥には槍ヶ岳も見えて、アルプス全域が綺麗に見渡せました。
歩いてきた白馬三山の縦走路も圧巻の光景!
北側を見れば中央奥に白馬岳、右手前に杓子岳が綺麗に見えました。ここから見ると白馬岳と杓子岳の形ってよく似てますね。
しばらく休憩してから縦走路を引き続き南下していきます。ここから先は人生で初めて歩く区間。
晴れたとは言いつつも、まだ時たま雲が湧いてきて稜線を流れるように覆うさまは神々しい景色。
夏山らしい、とても夏山らしいぞ。
ここら辺の登山道で特筆すべきはコマクサの群生。
そこら中に高山植物の女王が咲き乱れていて、その規模は白馬大池あたりを軽く超えていると思いました。
コマクサを見たければ白馬鑓ヶ岳もおすすめです。
振り返って見る白馬鑓ヶ岳。
この辺りは人も全然歩いていなくて静かな雰囲気がとても良かったです。まだ朝の6時なので気温も涼しくて歩きやすい。
途中、白馬鑓温泉の分岐も過ぎて稜線を直進。
ここら辺は道が穏やかで最高に気持ち良く歩けます。キレットに挑みに来ておいて何ですが、岩場なんかよりもこういうユルフワな道が大好きなんです。
お花畑も随所に広がっていて、白馬界隈はやっぱり高山植物が豊富だなと。
チングルマは花よりも穂の姿が多かったです。
朝の6時30分に天狗山荘に到着。
綺麗で立派な山小屋で、脇にはテント場も用意されています。
時間的にみんな出払った後なのか、誰もいなくてひっそりとしてました。
山荘の脇にあるのが天狗池。
そのすぐ横には水場もあってキンキンに冷えた水が美味しかったです。この先、唐松岳頂上山荘までは水が補給できるポイントもないので必要な分はここで汲んでおきましょう。
しばし休憩。標識にはついに不帰ノ嶮(かえらずのけん)の文字が出てきました。
核心部が近づいてきてますが、まだしばらくは穏やかな稜線区間が続くので、ヘルメット装着はもう少し先でも大丈夫です。
不帰キレット目指して、さらに稜線を南下。
引き続き緩やかで雄大な道がもう最高でした。なんで今まで歩かなかったんだろうというくらい、自分好みの稜線。
右奥のこんもりした山(天狗の頭)にまずは登ります。
山荘から20分ほどで天狗の頭に到着。
ここも周囲の視界が開けて眺めが最高の場所です。
左奥に見えているのは五竜岳と鹿島槍ヶ岳、右に見えている三角形の山は剱岳。
特にこの先は立山連峰と並走するように進んで行くので、晴れていれば常に右手に剱岳が見渡せます。
こちらは歩いてきた方面。中央に見えるのが白馬鑓ヶ岳。
今回の登山でとても好きになったのがあの白馬鑓ヶ岳。山頂までの稜線を含めたら白馬岳よりも好きかもしれない。
白馬鑓ヶ岳の魅力に気づけただけでも、今回登りに来て良かったと思えます。
不帰キレットがいよいよ近づいてきました。ユルフワな稜線とももうすぐお別れ。
正面には不帰キレットのゴールである唐松岳が見えているのですが、それ以上にその奥の鹿島槍ヶ岳の存在感が強烈です。
こんな感じで山の西側のトラバース路を進んでいき、写真3つ目の山の先が不帰キレットの入り口になります。
緊張してきたぜ。
そしてこちらが不帰キレットの入り口。
厳密にいえばこのルートの核心部はまだ先ですが、白馬岳から唐松岳へと南下する場合、この出だしの急な下り坂が結構厄介。
この急坂が天狗の大下り。
急なガレ場が続く下り道で、自分みたいなへっぴり腰には落石発生させないように非常に神経使うところ。ヘルメット必須ポイントです。
実際、白馬岳から唐松岳へと向かう場合、核心部の不帰の嶮が登りになるため難易度はそこまででもなく、序盤のこの大下りが最も危険とさえ言われているところ。
有名なのがこの垂直に垂れ下がった鎖場。
長めの鎖場が2本続くところで、上から見るとなかなかの高度感。
足場はしっかりしているので、三点確保を意識しながら下りましょう。ビビりな自分は時たま必殺の四点確保を繰り出してやります。(う、動けない……)
鎖場が終わってもまだまだ下る。
高低差300mほどを一気に急下降する、まさに大下り。
ただこの下りがあるからこそ、その先は登りメインになってくれるので岩場通過の難易度が下がるのが南下ルート。
鞍部に近づくにつれて、見上げるように立ちはだかる不帰の嶮。
威圧感が半端ないです。
あんな岩のお城を自分なんかが登れるのかと不安にもなりますが、ここまで来たら逃げ場もないので行くしかない。
振り返って見る大下りがまた凄い斜度。
これを登るのも辛いとは思いますが、細かい技術を持ち合わせていない私にとってはひたすら体力勝負の脳筋コースの方がまだマシ。
何年登山をやっても岩場の下りは一向に慣れません……
いよいよ不帰キレットに突入。
まず目の前にあるのが1峰。尖がり具合がえげつないですが、右の斜面を巻くように登って行くのでそこまで難しくもありません。
不帰1峰に到着。
目の前に立ちはだかるのが2峰。双耳峰になっていて、左が北峰、右が南峰。
不帰キレット最大の難所と言われるのが、あの2峰北峰までの登りになります。
まずは2峰に取り付くために1峰からいったん下る。
岩稜帯ではありがちな、登っては下っての繰り返し。
後日ひどい筋肉痛に苛まれたのも、こういった下りで下手に力んだからだと思います。
鞍部に到着して見上げる2峰。槍ヶ岳以上に尖がってるじゃないかっ!
あのとんがり目指していよいよ核心部の岩場に突撃。
近づいてわかる、ごっつい岩場のプレッシャー。
どこをどう登ればいいのか、パッと見ではわからないですが、その場に立てばルートを示すマーカーが随所に用意されているので迷う心配はそこまでありません。
鎖場やハシゴが連続する岩の迷宮。
登りというのもあって決して難しくはないですが、なんせ岩場が続くので緊張感が抜けない。
傍らに見える岩の1つ1つが尖がってやがる。
さらに右奥に見えるのは岩の殿堂、剱岳。岩山のボス的存在が常に見守っていてくれますが、ビビりな自分にとっては剱岳から監視されている気分。
「そんなへっぴり腰で登りきれんのかよ」と。
山頂が近づくにつれて鎖場も急になってきます。
幸いだったのがこの時間にすれ違う人も後ろに続く人もおらず、自分のペースで登れたこと。
渋滞云々とかではなく、こういう岩場は人に見られているだけで緊張が数倍増し。無様な姿はさらしたくないのよ。
見ないでもいいのに怖いもの見たさで登ってきた鎖場を見下ろしてしまう。
そして自覚する。ここを下山するのは自分には無理だなと。
不帰キレットは南下するか北上するかによって難易度が大きく変わると言われていますが、それを身をもって体感しました。
自分みたく岩場苦手の人は、白馬岳から唐松岳へと目指す方が断然良いと思います。
こうして核心部を乗り越えて不帰2峰北峰に到着。
ポンコツながら頑張りました。まだ唐松岳は先ですが、山頂は一息付けるほどの広さがあるのでここで小休憩。
すぐ目の前に見えているのは2峰南峰。
この区間は大した難所もなく歩くことができます。
不帰2峰南峰に到着。
暑さのせいか緊張のせいか、水分消費量が半端なくて天狗山荘で汲んだ水が残りわずかになってきました。
2峰から先も岩稜帯が続きますが、ここら辺は特に難しいところもなく見慣れた北アルプスの稜線という感じ。
奥に見える尖った峰が3峰だと思いますが、あちらは登頂せずともトラバース路でスルーできます。
花崗岩が立ち並ぶ白き稜線。
ここら辺は非常に気持ち良く歩けた区間で、いつの間にか不帰キレットも終わりを迎えて唐松岳が間近に迫っていました。
こうして10時15分に唐松岳に登頂。人生初の不帰キレット、無事に踏破。
山頂はあいにくガスっていましたが、北アルプスの中でも登りやすいとされる唐松岳。ここに来て一気に登山客が増えました。
不帰キレットから登ってきたことをアピールすべく、ヘルメットをしばし脱がずにやり切った感を出していたのはここだけの話。誰一人見向きもしませんでしたがね……
白馬岳は見えなかったものの、歩いてきた稜線の一部が顔を出してくれました。
怖い箇所もありましたが不帰キレットを無事に乗り越えて、これでようやく白馬岳~唐松岳~五竜岳~鹿島槍ヶ岳が繋がりました。
歩いた軌跡を繋ぐというのも、登山の面白さの1つよ。
山頂から10分ほどのところにあるのが唐松岳頂上山荘。
水が切れかかっていたのでここで飲料水を購入して一息つきました。
ここからは何度も歩いたことのある八方尾根を下山。
時刻もまだ昼前とあって、登山客がどんどん押し寄せて賑わってました。
途中は省略して、八方尾根の最大の見どころと言えばこの八方池。
あいにく雲が多かったですが、白馬岳の山肌は見せてくれて、池に映るモクモクした雲の絵も夏らしい景色でした。
晴れていればこんな感じの美しいシンメトリーな景色を見せてくれる八方池。ここも北アルプスの中ではお勧めの場所です。
(2018年7月20日~21日 唐松岳~五竜岳テント泊登山より)
八方尾根のもう1つの名物と言えばこちらのケルン。
もの言いたげなこの顔が憎めない。
山はガスって来たものの、下界は晴れ渡って麓の白馬の街並みを一望できました。
この天空の木道路は何度歩いても気持ち良いです。
こうして八方池山荘のリフト乗り場まで下山完了。
時刻は12時過ぎでしたが、唐松岳頂上山荘に宿泊する人たちなのか、これから登る準備をしている人も多くて賑わっていました。
ここからはスキー場のリフト2本とゴンドラという文明の利器を駆使して一気に下山。
涼しい風を受けながら飲み干すポカリは最高に旨かったぞ。
下界に降り立って向かったのは八方の湯。バスターミナルのすぐ近くにある日帰り温泉で、公共交通利用にとっては非常に有難い存在です。
平日というものあってそこまで混雑はしてませんでした。
日帰り温泉も楽しんで、白馬八方バスターミナルからバスタ新宿行きの高速バスに乗って東京へと帰りましたとさ。
1泊2日の白馬三山~唐松岳縦走が無事に完了。
日本三大キレットの1つ、不帰キレット。
実際に歩いてみた限りではそこまで難しい箇所もなくて、自分にとってはちょうど良い難易度の岩場という感じでした。
個人的にはキレットよりも天狗山荘あたりの雄大な稜線が最高に気に入ったので、ここはぜひまた歩いてみたいと思います。
楽しい夏の北アルプス登山でした。
【日程】
2025年7月31日
【コースタイム】
3:30 白馬山荘
4:40 杓子岳
5:40 白馬鑓ヶ岳
6:30 天狗山荘
7:00 天狗の頭
8:30 不帰1峰
9:20 不帰2峰北峰
9:35 不帰2峰南峰
10:15 唐松岳
12:00 八方池
12:35 八方池山荘
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