北アルプスの笠ヶ岳に1泊2日の山小屋泊で登ってきました。
ルートは急登と言われている笠新道。これがもうかなり過酷で片道8時間近くもかかる長丁場。笠ヶ岳山荘に着いた時にはもうヘトヘトでした。
天気も1日目はガスが多めで展望もあまり望めなかったですが、杓子平から見た雄大なカール風景と夕食後に見た夕焼けの空が素晴らしかったです。
2025年8月17日~18日【北アルプス】笠ヶ岳 笠新道ルートで夏山登山
因縁の笠ヶ岳……。
あれは忘れもしない12年前の夏。まだアルプスなんて数えるほどしか登っていない中、テント装備を買いそろえてウキウキしながら挑んだのが双六岳~笠ヶ岳の縦走コースでした。
1日目は新穂高温泉から双六小屋まで。思いのほか早く着いたものだから、双六岳に加えて三俣蓮華岳まで首を突っ込んだわんぱく登山。それが仇となったのか、2日目に膝を痛めて笠ヶ岳の稜線で危うく遭難しかけたのは苦い思い出。調子に乗った自分に活を入れてくれたのが笠ヶ岳でした。
何とか登頂こそ果たしたものの、泣きながら撤退するように無様な姿で下ったのが笠新道。今回はそこを登ります。
スタートは新穂高温泉。
今回も毎日アルペン号を利用したのですが、山小屋とのセットプランというのがあったのでそれを初めて使ってみました。1000円くらいお得で、しかも山小屋(笠ヶ岳山荘)へ電話を入れずにWebで予約が完結するのが良かったです。
トイレも済ませて、朝の6時30分に登山開始。
新穂高からは左俣林道を1時間ほど歩いていきます。
ここは春先の雪崩(土砂崩れ)で通行止めになっていたのですが、爆速復旧で7月初旬から無事に通れるようになってました。有難いことです。
道はほとんど平坦なので、ここら辺は良い足慣らし。
単調な道を歩き続けて、こちらの標識があるところが笠新道の入り口になります。
双六岳に向かう場合は林道をさらに30分ほど進めば登山口。途中にはテント泊も可能なわさび平小屋もあります。
笠新道登山口には水場あり。今年は雨が全然降らずに、事前の情報では枯れている可能性もあると聞いてましたが、ドバドバと冷たい水が流れていました。
笠新道に挑む場合、この先一切水の補給ができないのでここでしっかり汲んでおきましょう。自分は2.5L持って登ることにしたのですが、山荘に着くころにはギリギリでした。
いや、本当にきつかった……。
水分補給を十分して、いざ登山開始。
出だしから登り坂ですが、序盤はまだ急登とまではいかないつづら折りの道。
ここら辺はまだ余裕です。
笠新道は無駄なアップダウンが一切なく、基本的にずっと登りが続く体力と気力勝負なコース。
展望も序盤は全くなくて、唯一の目印となるのがこの標高が記された標識です。
入口が標高1400m弱なので、すでに300mほど登った地点になります。まだ大丈夫。
進んで行くと足元に岩が増えてきます。
これが笠新道の厄介なポイントの1つで、この岩があるために歩幅が乱される。下りも下りで滑らないように注意しなきゃいけないのでスイスイ下れない。
12年前はここを足を痛めながら半泣きで下ったわけですが、道中の景色なんて全く覚えていない中で、この岩に苦しめられたのだけは鮮烈に覚えています。
途中には真新しい倒木もありました。
これは1週間ほど前の大雨で倒れたもので、下山してくる方にも途中に倒木あるから気を付けてと教えていただきました。
通過する分には問題なかったですが、こういう細かい障壁のジャブが結構効いてくる。
単調な道を登り続けること2時間。少しずつ景色が開けてきました。
山頂はまだまだ先ですが、あいにく雲がかかって先の状況が見えない。
ただこれが逆に良かったのかもしれないです。日差しがない中でこれだけ汗だくだったんだから、カンカン照りならどうなっていたことか……。
1日目はガスが多めでしたが、それでもたまに展望が覗いてくれて背後には穂高連峰の刺々しい岩稜が見えました。
尖っとるな~
その後もひたすら登りが続く道。
上に行くにつれて岩も大きくなってきて部分的にハシゴも設置されていたりします。
これだけ見ればなんてことない道ですが、ここまででだいぶ疲れてます。高低差もまだ1000m程度なのに、急登続きで精神的に参ってくる。さすが過酷と言われる笠新道。
12年前に大きなしっぺ返しを受けた笠ヶ岳。今回は前回のような無様な姿は見せずにいかにスマートに登るかがテーマです。
自分の中ではリベンジ戦とも言えるわけですが、普通リベンジするなら同じ道をたどるのがセオリーなんでしょうがそこは完全無視。前回はテント一式を背負った重装備も今回は山小屋泊。課金して軽量化実現よ。
コースも今回は双六岳はスキップして笠ヶ岳との一騎打ち。前回よりも荷物軽い&距離短いのイージーモード。これで満身創痍になるんだったら、自分にはもう笠ヶ岳は無理です。今日でお別れします。
そんな小賢しい戦略を立てての12年越しの笠ヶ岳。
前回は下山で使った笠新道を頑張って登ってやろうというのだけが唯一の大義名分です。
こうして登ること3時間。
笠新道の最大の見どころポイントともいえる場所に到着。
それがこちらの杓子平。標高約2500m地点に広がる雄大なカール地形を望める場所です。
到着時にガスっていたものの、休憩している間に一時青空が広がって山の稜線が見えました。
そして短い時間ではあったものの、笠ヶ岳の山頂もチラ見え。
肉眼ではその肩にある笠ヶ岳山荘も見ることができます。
肉体的な疲労はかなりのものですが、ゴールが見えただけで精神的にはだいぶ楽になる。
杓子平からは完全な高山帯になって、辺り一面にはチングルマの群生が広がっていました。
8月中旬のお盆明けともなければ花はもう残っておらず、すべてが穂の姿に。
夏の終わりを感じて少し寂しい気持ちにもなります。
一休みして登山再開。
ここから稜線まではまたひと登りあるので頑張ります。
目の前に広がるアルプスらしい雄大なカールが美しい。何となく木曽駒ヶ岳の千畳敷カールに似た雰囲気を感じます。
ここが稜線までの最後の急登ポイント。
目の前の岩場を右側から回り込むように進んで行きます。先ほど、笠ヶ岳の山頂が見えたものの、まだここから2時間くらいはかかる距離。
近いようで遠い摩訶不思議な北アルプス・笠ヶ岳。12年経ってもやっぱり強敵ですわ。
ここら辺は少し登っては休んでの繰り返し。なぜかわからないですが、この笠新道は力が吸い取られるように疲れていきます。
それでも振り返れば美しい景色で、序盤の急登とはかけ離れた穏やかな空間が広がっています。
この杓子平も12年前は下りるのに必死であまり記憶にないところ。
前回のブログを読み返してみたら、この辺りでライチョウと出会ってました。こういうとき、ブログとして記録に残しておいてよかったと思えます。
その雷鳥様について、今回はこの先の稜線でご登場いただくことになりました。
こうして12時過ぎにようやく笠新道を登り切り、稜線分岐に到着。
笠ヶ岳はガスって見えなくなってしまいましたが、これから歩く稜線はしっかりと捉えました。
ここから先も一部登りはありますが、これまでの道に比べたら楽なもんです。
その前に、まずは少しだけ反対側へと進んで抜戸岳に登頂。
笠新道の分岐から10分程度で来れる距離です。ここは前回スルーしたところなので、今回是非とも立ち寄っておきたかったところ。
何も見えやしませんでしたが、登頂記念に標識だけ納めておきます。
あとはひたすら笠ヶ岳目指して稜線を直進。
ガスも濃くなってきましたが、涼しくて歩く分にはちょうどいい。
そんな中で聞こえてきたのが、「ウポッ!ウポッ!」というあの重量感のある鳴き声。
声がした方を見ると、すぐ近くでライチョウが顔を出していました。
やぁ!という感じでまるで向こうから声かけてくれた感じ。例によってふくよかなお腹が可愛いですが、割とこの子はスタイリッシュな方だと思います。
先月の白馬岳で見たライチョウは見事なまでのわがままボディーだったなぁ。
ここら辺の稜線は平坦で非常に歩きやすいところです。
晴れていれば展望も最高で、その至福の稜線歩きは2日目に実現しました。
時折ガスが晴れると、先ほどまでいた杓子平を一望。
上から見ると広々としたカール地形がまた壮観な眺めです。
さらに進むと有名な抜戸岩に到着。
稜線の途中に構える岩の門で、ここの間を通って行きます。笠ヶ岳登山者を出迎える入場ゲートという感じ。
そしてついに笠ヶ岳山荘のキャンプ場に到着。
ここのテント場は山荘から少し下ったところにあって、ここから山荘までは5分ほどの登りです。
一応テント場にも水場はあるのですが、今年は少雨というのもあってすでに枯れていました。
岩に書かれた声援を受けてあと一息頑張ります。これはよく覚えていて、12年前にも確かにありました。懐かしい笠ヶ岳の記憶が蘇ります。
しかしすでにテントがいくつも張られてましたが、ここまでテントを担いで登ってくるとは本当に凄いわ。みんな膝は大丈夫かね。
こうして14時に笠ヶ岳山荘に到着。
登りだけで8時間近くかかりました。距離はそこまで長くはないはずなのに、高低差が半端ないからか。いつも以上に水分も消費して何とか無事にたどり着けました。
こちらが受付。
2025年の夏は異例の少雨で山小屋の水不足が問題となってますが、ここ笠ヶ岳山荘も例外ではなく宿泊者でも水は有料(500ml/200円)となっており、洗面所の水道も出ない状態になってました。
ペットボトル飲料は制限なく買えるということだったので、到着早々ポカリを2本購入。1本はその場でがぶ飲みよ。
宿泊手続きを済ませて中へ。初めて泊まる山小屋ですが、清潔感にあふれていてとても綺麗でした。
登山とは全然関係ないですが、受付用紙を書いていて思ったのが、最近恐ろしいまでに漢字が書けなくなっているな~と。特に予定コースを書くところとか。読めるのに書けない。字も下手になっている。困ったもんです。。。
泊まったのはこちらの2段式の大部屋。
12人部屋でしたが、この日は割と空いていて5人で使うことができました。
夕食の時間は16時20分。
1時間以上時間があったのと、少しだけ青空が戻ってきたので1日目に山頂まで登ってしまうことにしました。
小屋の目の前に山頂はありますが、多少登るので10分くらいはかかります。
こうして12年ぶりの笠ヶ岳に登頂。
展望は残念ながらほとんど望めませんでしたが、頭上は晴れて明るい日差しが届く山頂でした。
北アルプスの中ではやや外れたところある笠ヶ岳。登りの過酷さも相まってもしかしたら今後登りに来ることはないかもしれないので、この山頂標識はしっかりと目に焼き付けておきます。
夕方に近づくにつれて天気も回復傾向で、少しずつ青空が広がり始めた時間帯。
山頂でたたずんでいても暖かかったので、しばらくボーっとして過ごしてました。
山頂脇の祠でお参り。
明日は晴れますようにと。
小屋に戻って待望の夕食の時間。
メニューはハンバーグカレーでした。舌がお子様なので、変にこだわった食事よりもこういう方が好き。しかもカレーはおかわり自由!たらふく頂いて美味しゅうございました。
ちなみに毎日アルペン号のセット割引が2食付きのプランだったので、朝食は自由に出発できるように弁当にしてもらいました。
弁当は酢飯の混ぜご飯とおかず。この時期のご来光が5時過ぎで朝食も5時からだったので、翌朝は4時半に自炊場で弁当を食べて、小屋前でご来光を眺めての出発となりました。
夕日の時刻までしばらくあるので、夕食後は自室に戻って他のハイカーさんと雑談タイム。
笠ヶ岳山荘の嬉しいところが部屋にコンセントが用意されていて自由に充電して良いところ。
スマホのバッテリー残量って登山中に地味に気になるところなので、これは非常に有難かったです。
そうして18時半、小屋の外に出て見ると夕日を感じられるくらいに雲が取れてきてくれました。
予期せぬハート形のメルヘンな夕日。映えるじゃないか。
稜線の雲もだいぶ取れて、明日歩く至福の縦走路が姿を現してくれました。
何ともそそられる稜線。
実際、2日目の朝は素晴らしき稜線ハイクを堪能できました。
夕日とは反対の東側では、雲の合間から穂高連峰の岩山もお目見え。
あれは奥穂高岳かな?普段は長野側(東側)から穂高岳~槍ヶ岳を眺めることが多いので、西側からの眺めは少し不思議な感じがしました。
そして夕日が沈む時刻。
薄っすらとガスが漂うものの、陽が沈む情景はしっかり目にすることができて良かったです。
ほんのりと赤く染まる笠ヶ岳。
笠ヶ岳山荘の立地条件はかなり良くて、山頂に行かずとも小屋前から夕日と朝日を眺めることができます。
翌朝も笠ヶ岳山頂でご来光を迎えようかと考えてはみましたが、結局面倒になって小屋前から拝むことになりました。
雲が完全に引いたのは太陽が雲海の果てに沈んだ直後。
美しいまでの夕焼けがこの日の最大のご褒美となりました。
わかりづらいですが左奥の山影は白山です。
この時ばかりは山荘に泊まっている人がみんな出てきて、思い思いの場所で夕焼けの空を眺めてました。
こうして1日目が終了。
大変でしたが、無事に笠新道を登り切れて良かったです。色々と思うところがあった笠ヶ岳も、自分の中で気持ちを一区切りつけれた気がします。
登頂は果たしましたが、登山として面白かったのは2日目。そこには素晴らしきアルプスの絶景が待っていました。
2日目に続く……
【日程】
2025年8月17日
【コースタイム】
6:30 新穂高温泉
7:20 笠新道登山口
10:40 杓子平
12:20 抜戸岳
14:00 笠ヶ岳山荘
14:30 笠ヶ岳
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