8月9日~10日で南アルプスの白峰三山(北岳~間ノ岳~農鳥岳)を1泊2日の山小屋泊で縦走登山してきました。例によって公共交通利用ですが、電車とバスだけでも十分にアクセス可能です。
1日目は広河原をスタートして北岳登頂後、北岳山荘まで。南アルプスらしい樹林帯の急登が疲れましたが、稜線に出てからの展望は圧巻!
やはり、南アルプスの山々は偉大。達成感が違いました。
2019年夏山登山、そのメインイベントとして捉えていたのが今回の南アルプス白峰三山。
白峰三山とは、ご存じの如く「北岳」「間ノ岳」「農鳥岳」の3つの山。三山とも標高3000mを超える日本を代表する名峰たち。
このうち北岳と間ノ岳は過去に登ったことがありましたが、農鳥岳が登山を始めて10年経っても未踏のまま。この白峰三山の縦走はずっと成し遂げたいと思っていました。
そしてようやく実現できたのが2019年の夏。もう何もかもが最高でした。
まずは1日目の広河原から北岳登頂、北岳山荘までの記録でございます。
2019年8月9日~10日 南アルプス・白峰三山縦走登山(1日目)
ずいぶん前から計画していた白峰三山縦走登山。去年も一昨年も天気とタイミングが合わなくて断念してました。
もともとは2泊3日のテント泊の行程で歩くつもりでいましたが、諸事情により1泊2日の山小屋泊に変更。いつもの縦走よりも荷物軽めでございます。
電車・バスでの公共交通アクセスは、甲府駅からの広河原行きバスが利用できます。東京から甲府までは夜行バスがないので、一番遅いバスに乗って深夜0時過ぎに甲府駅に来ました。
夏シーズンの広河原行きバスの始発便は4時35分とかなり早め。0時過ぎに甲府駅に到着してから4時間ほどしかないので、特にホテルなどは取らずに駅前のバスロータリーあたりで仮眠して時間つぶしました(久しぶりのSTB的な)。4時過ぎに1番乗り場バス停に並び始めました。
まだ電車は動いていない時間ですが、近場のホテルに宿泊していたのか、続々と登山者が押し寄せる。
予定通りの時刻にバス到着。この日は2便出して全員乗り切れる状況でした。金曜日なのでまだマシでしたが、翌日からお盆休みに入るのでおそらく相当混雑するはず。
バスに2時間揺られて朝の6時半に広河原に到着。2時間っていうと東京から甲府までとあまり変わらないので、そう考えるとこれもなかなかの長距離バス。貴重な睡眠時間に充てましょう。運賃は2150円(協力金含む)。
マイカーの始発組もほぼ同時到着になるので、広河原はかなりにぎわっていました。
広河原から見上げる北岳(標高3193m)。富士山に次ぐ日本第2の高峰、まずはあの山を目指します。
一見近そうにも見えますが、あの頂にたどり着くためには結構な体力と時間が必要。
準備を済ませて出発。甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳に行く場合はここからさらにバスに乗り換えが必要ですが、広河原からスタートできるってのは北岳のいいところですね。
こちらのつり橋が登山道への入り口。このつり橋を渡るのも、もう8年ぶり。懐かしいです。
北岳登頂後は、間ノ岳~農鳥岳と縦走して奈良田へと下りるので、もうここには戻ってこない予定です。
橋を渡った先にあるのが、広河原山荘。ここにはテント場もあるので、前泊地として利用するのもありだと思います。
見ての通り、登山者にうれしい自販機あり。
そして、ここからいよいよ登山道開始。
標識に従って南アルプスの森へと入っていきます。
しばらくは樹林帯の登り坂が続きます。
南アルプスなら大抵そうですが、この序盤の樹林帯が本当に長くてキツイ……。北アルプスと比べると森林限界も高いので、展望が開けるまでにかなり登らないといけません。
心を無にして黙々と登る。
展望こそないですが、南アルプスの森の雰囲気は割と好きで、登山道も全体的に歩きやすい道だと思います。北アルプスのように岩が多いわけでもないので、膝にやさしいというか。
ただし暑い!水分は多めに持つべし。
途中、大樺沢ルートとの分岐がありましたが、白根御池小屋経由のルートで行きました。
森の登山道をひたすら登っていきます。
荷物がテント装備ではなく小屋泊用だったので、いつもより軽くてペースは悪くなかったです。割と快適に登れて、休憩もそこそこに。
間をかなり端折ってますが、こんな感じに道が平坦になってきたら小屋も近いです。
白根御池小屋まであと20分の標識。
ここまでが長いですが、この標識が出てからは比較的道も緩やかになります。
標高2200mあたりまで登ってきましたが、まだ景色は緑美しい森の中。
それでも登山道わきには徐々に花も増えてきます。
小屋の手間に流れていた小川。
これこそ南アルプスの天然水!南アルプスの水場の水は本当に美味しいので、心ゆくまでご賞味ください。暑い中急登を登っているから、余計に旨い。
朝の8時30分、白根御池小屋に到着。広河原から1時間半なのでいいペース。やはり荷物が軽いと機動力が全然違います。
樹林帯の登山道から一時解放されて、開けた場所に建つ綺麗な山小屋。
水場はもちろん、見ての通りソフトクリームまで売っています。まさに過酷な道中のオアシス的存在。
そして、ここのトイレが山小屋とは思えないほど綺麗なのに感動しました。めちゃくちゃ綺麗です。
テント場もあります。
山頂まではまだ4時間近くかかる距離なので展望はそこまで望めませんが、芝生のキャンプサイトは雰囲気良いです。
小屋の名前にもある通り、小屋のわきには白根御池という池もあります。
そしてそこから見上げる北岳。
だいぶ近づいてきたようにも感じるし、実際かなり登ってきたのですが、まだ行程としては半分も来ていません。広河原から高低差700m登りましたが、ここからさらに900m登るのが現実。頑張るしかない。
ここからルートは二手に分岐しますが、今回は草すべりルートで行きました。
標識にも書いてある通り、北岳山頂までは約4時間。やはり偉大な南アルプス、そう簡単には山頂に立たせてくれない。
そして小屋を出て早々の、この草すべりがかなりの急登。おまけに先ほどまで遮ってくれていた日差しが直に当たるので、かなり暑い……。首筋がチリチリ焼ける。
小屋で水分補給した分が一気に噴き出てるんじゃないかってくらい、汗だくになりました。
ただ、ここら辺から一気に花が増えます。
あんまり身をかがめてみる余裕がないけど、コバノコゴメグサがたくさん咲いていました。
日差しが直に当たるということは展望が開けているということでもあり、後ろを振り返れば鳳凰三山が間近に見れました。
眼下に見える池が先ほどの白根御池。
目の前にある草すべりの斜面をひたすら登っていく。
北岳登山がもう8年ぶりなので、登山道の感じはあまり覚えていなかったですが、こんな急な道だったんですね。
8年前はおそらく体力も一番充実していた時期。昔は軽快に登れていたルートがどんどんしんどくなってきた……、とかあまりに悲しすぎるので、末永く体力をキープしておきたい。特にこうして記録に残しておくと、過去とのコースタイムの比較も容易にできてしまうので。(でも、そのためにはどうしたらいいんだっ!)
マルバダケブキ
草すべりの中盤はこの花の群生が凄まじかったです。
木陰を見つけて適度に給水と小休憩。
山頂が見えているのに全然近づかないもどかしさ。これが北岳マジックなので、焦らずゆっくり進むべし。
急登を超えて鹿よけ用の防護柵が見えてくると、いよいよ展望も一気に開けてきます。
標高2700mに近づいたところでようやく森林限界。
ヨツバシオガマ
防護柵の中は一面お花畑。いろいろな種類の高山植物が咲いています。
ハクサンフウロの群生も
傾斜は緩くなってもまだまだ続く登り坂。
そして前を歩く女性が速かった。話を聞いたら北岳を日帰りっていうからすごいわ……
鳳凰三山の稜線とほぼ同じくらいの高さまで登ってきた。
標高は約2800mの地点。
尾根の向こうには富士山の山影も見えました。
雲がかかってあんまり綺麗に見えていませんが、この写真を採用していることから何となく察してもらえる通り、この後は雲に隠れて富士山は見れなくなってしまいました。
富士山の展望は2日目が素晴らしかったのでそちらのほうで。
10時20分、ようやく稜線に立つ。
そしてここに来て目の前に飛び込んでくるのが2つの名峰。
仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳。南アルプスの日本百名山コンビ。
どちらも北沢峠から日帰り登山が可能。南アルプスの中では比較的楽に登れる山なので、親しみある方も多いはず。
初めて南アルプスに挑戦するのであれば、まずはあの2つのどちらかをお勧めします。
標高3000mに近づいても、なお山肌に緑が多いあたりが南アルプスっぽいですね。
雪渓も一部で残っていますが、雪の上を歩くような場所は全くありませんでした。
小太郎山分岐に到着。
ここから先がいよいよ面白いところ。景色も山の雰囲気も一気にアルプス感が増します。
目の前に見える仙丈ヶ岳、左奥に見える山脈は中央アルプスになります。
北岳までの稜線ハイク開始。
ここら辺まで来たら道も緩やかで心地の良い登山。風もさわやかで気持ちいいです。
仙丈ヶ岳を横に眺めつつ、のんびり進む。
金曜日なのですれ違う人も多くはなく、かなり静かな山歩きが楽しめてます。前週の白馬岳とはまるで雰囲気が違う。
歩いてきた稜線と、奥に見える甲斐駒ヶ岳。
キリっとした甲斐駒ヶ岳、カッコいいっすね。さっき初めての南アルプスとしてお勧めしたけど、あの甲斐駒ヶ岳の手前にある栗沢山っていうのもお勧めです。『南アルプスの天然水』のcmのロケ地になった山で、宇多田ヒカルも登っていた山です。
仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳ふたたび。
稜線上の岩場。
ここら辺はもう全く記憶になかったですが、手すりもつけられたごく普通の登山道。難しいところは特にありません。
北岳登山で必要なのは体力、これに尽きる。
下からずっと見上げていた北岳山頂がだいぶ近づいてきました。
標高ももう間もなく3000mというところ。
歩いてきた稜線と鳳凰三山。
地蔵岳のオベリスクのとんがりも良く見えました。
そういえば、鳳凰三山ももうかれこれ8年も登っていないので、そろそろ登りに行きたいところです。
10時55分、北岳肩の小屋に到着。
標高はついに3000m。記念すべき令和初の3000m超えでございます。
空気の薄さは特に感じません。ただただ暑いです。
この肩の小屋が、北岳山頂から一番近い山小屋です。テント場もあって、ロケーションとしてはかなり恵まれた山小屋だと思います。
水は1リットル100円で汲めます。
ここまでくれば山頂まではあと少し。残すところ約1時間の道のり。
アルプスらしい岩場が多くなってきますが、岩陰には高山植物もたくさん見られるようになってきます。
タカネシオガマ
チシマギキョウ
山頂手前にも分岐点。
両俣小屋へ下る標識が出ていますが、2019年8月現在は途中の道が崩落のため通行止めになっています。この区間を歩こうと考える人は相当な強者だとは思うけど、ご留意ください。
南アルプスの女王・仙丈ヶ岳
何度も眺めてしまう女王の穏やかな山容。
ラストはゴツゴツした岩場ですが、特に難しい箇所はありません。
道しるべのマーカーも親切なほどに付けてくれています。
そして東側からだいぶ雲が立ち込めてきました。山頂にたどり着くのは自分が先か、雲が先か……
山頂に着くよりも先に見えてきたのが間ノ岳に至る稜線。
明日はこの稜線をひたすら歩いていく、今回の縦走のメイン区間。間ノ岳から先はまだ歩いたことがないので楽しみです。
ついに目の前に捉えた北岳山頂。
広河原からも見えていた日本第2位の高峰の山頂はこんな感じでございます。
こうして11時40分、8年ぶりに北岳に登頂完了。
標高3193m、富士山に次ぐ日本で2番目に高い場所です。
どうにか雲に巻かれる前に山頂に立てました。
そして山頂は全然人がいなくて快適。静かなのも南アルプスの魅力の1つ。
北岳日帰り女性も難なく登頂されてました。
こちらが山頂から改めて見る間ノ岳への稜線。日本に数少ない3000m超の山々を連ねる天空街道。
東側からガスが立ち込めていましたが、北岳山荘も眼下にしっかりと見えました。今日はあそこまでなので、あとは気楽です。
北岳から眺める仙丈ヶ岳。
あちらにも夏らしい雲が上空を漂ってました。
こちらは西側の展望。目の前は雲がかかっていますが、晴れていれば中央アルプスや北アルプスが見渡せます。
こちら側の展望も翌日のお楽しみに取っておきます。
山頂でしばらく休憩したのち、北岳山荘目指して稜線を行く。
山頂直下は急登になっていて滑りやすいので要注意。
高山植物についてはここから先が真骨頂の区間で、登山道の至る所にお花畑が広がっています。
ハクサンイチゲ
一般的には6月頃が旬の花。8月はもう終わりかけですが、今年は全体的に開花が遅かったのもあってまだ綺麗に咲いていました。
ミネウスユキソウとタカネナデシコ
ある程度下ると八本歯のコルとの分岐点(吊尾根分岐点) に到着。
北岳山荘は直進ですが、八本歯のコルへ行く道が特に花が綺麗と聞いていたのでちょっと寄り道。
シナノキンバイ
タカネツメクサ
聞いていた通り、すごい規模のお花畑が広がっております。
北岳には有名な固有種「キタダケソウ」というのが咲いているのですが、時期が6月なので8月では残念ながら見ることができません。
6月の北岳っていうと梅雨に差し掛かる時期だし、まだ残雪もあるだろうから、なかなか来づらいんだよなぁ……
花を愛でて満足したのち、再び稜線を行く。
雲が稜線を越えられずに難儀しているようで、意外と天気が持ちこたえております。(雲も南アルプスに手こずっておるぞ!うっひょっひょ)
稜線上に設置された階段。
北岳山荘までの下りはなかなかの急斜面です。
南側から眺める北岳。山岳感あるなぁ。
ボーっと口を開けて眺めていると、脇から小さな声で「ウポッ、ウポッ!」と。
こいつはもしや……
雷鳥(ライチョウ)発見!南アルプスでは数が減ってきているって聞いてたけど、運よく出会うことができました。
ちなみに岩陰の奥にもう1匹いました。「ウポッ、ウポッ!」
ライチョウにも出会えてご満悦で北岳山荘に到着。
13時に到着でしたが、テント場はまだ比較的空いていました。
ただ、今回は久しぶりの山小屋泊。お盆前だし空いているだろうと思って意気揚々と受付へ向かったのですが……
入り口にこの張り紙。。。
布団1枚に2人ってマジかぁ……、と。やっちまった~とテント持ってこなかったのを激しく後悔しましたが、受付の兄ちゃんと話してみたら、どうやら翌日からの繁忙期に備えて事前に張り紙しているとのことで。
この日は布団1人1枚で案内していると聞いてホッとしました。
ということで北岳山荘のお部屋へ。ここも8年ぶり。
複数の小部屋と大部屋で構成されています。
こちらは大部屋。混雑を心配しましたが結局杞憂に終わって、この日は結構空いてました。使っていない部屋もあったし。
あと、北岳山荘のトイレもなかなか綺麗でした。
こちらはテント場。テント場も15時ごろになってもまだ空きスペースがあったので、皆さん快適そうでした。
ちなみに、今回テントをやめた理由ですが、雷が怖かったからです。実はこの数日前に北岳で雷に打たれて亡くなる事故が発生していて、さらに北アルプスの笠ヶ岳では実際にテントに雷が落ちた写真がTwitterに載せられていて、それを見てしまっていて。。
この日も午後に雷雨の予報が出ていたので、小屋泊にしようと。
ビビったわけです。自分、ビビりなんです。
まぁこれもリスク回避の1つ。実際、荷物も減らせて快適に登れたし、この日の夜も雷ゴロゴロ鳴って大雨も降ってたので、まぁ小屋泊でも良かったのかなと。
そんなわけで北岳山荘で美味しい夕食でございます。朝は早めに行動するので夕食のみのプランにしましたが、この夕食が美味しかったです。
もうね、お米がめちゃくちゃ美味しかった!多少水気が多めの自分好みの炊き方。がっついて3杯もおかわりしちゃいましたよ。
下界では食べれない量を簡単に平らげる山生活。山に入れば非常に健康的な生活が送れますね。
こうして1日目が終了。残念ながら夕方から雷雨に見舞われたので、夕日は見ることができませんでしたが、翌日は朝から快晴で、もうそりゃ~すごい景色が見れたので、近々続きを書きたいと思います。
白峰三山縦走、2日目に続く……
【日程】
2019年8月9日~10日
【コースタイム】
6:50 広河原
8:30 白根御池小屋
10:55 北岳肩の小屋
11:40 北岳
13:00 北岳山荘
コメント
みやっちさん、やっちまったなーと思い、少しふきました。
でも、1枚布団でよかったですね。自分は絶対にテント泊です。
みやっちさんに影響され、縦走をザックの重さに耐えながら楽しんでいます。
自分はお盆前に、北アルプス5泊6日テント泊で行ってまいりました。天候にも恵まれました。
新穂高スタート → 焼岳 → 上高地におりて、槍ヶ岳 → 双六 → 笠ヶ岳 → 新穂高に戻りました。
笠新道の下りは参りました。(膝の痛みを乗り越えたログも読み返しました)
次回も楽しみにしています。
張り紙を見た時はテントを持ってくればよかったと激しく後悔した瞬間でしたが、空いていたので良かったです。小屋はこれがあるから怖いですね……
5泊6日のテントお疲れさまでした。なかなかのロングルートですね~。槍~双六の西鎌尾根は私も昨年歩きましたが、眺めも良くていい道ですよね。
笠ヶ岳は苦い思い出がありますが、もうだいぶ時間も経ったので、そろそろもう1回登りたくなってきました。
私、この日は北岳山荘から奈良田へ降りてました。ニアミスでしたねw
因みに8日の受付時も1枚2名の案内でしたが、私はロフトに一人で大の字でした。夜も暑かった。
エルエルさん、こんにちは。
なんと1日違いでしたか。お互い混雑前に登れてよかったですね。あの張り紙を見た時はヒヤッとしましたよ……。奈良田までの下りは長かったですが、天気も良く充実した山歩きができました!