7月に東北の鳥海山へ山小屋泊で登ってきました。
宿泊したのは山頂御室小屋。日帰りでも登れる山ですが、なんせアクセスが遠いので贅沢に1泊2日の行程で。
その甲斐あって、山頂の小屋からは海に沈む夕陽やご来光など、山小屋泊ならではの景色を見ることができました。
これが人生2度目の鳥海山。山形と秋田にまたがる日本百名山で、独立峰の美しい山容から「出羽富士」とも呼ばれている名峰です。
日本海に面しているので、山の上からは海も間近に見渡せます。
個人的な印象ですが、東北の山の中でも割と多くの人が憧れを持つ存在な気がします。首都圏からアクセスが遠く、公共交通でも行きづらい(金がやたらかかる)のが理由の1つだとは思いますが。
私が最初に登ったのは2015年の8月。この時は往復夜行バスと路線バスを乗り継いでの0泊3日という、半ば強行の日帰り登山でした。
正直なところ、少しもったいないことをしたな、という思いもあり、次に来るときはゆっくり山小屋泊で来ようと決めてました。
そしてその次というのがまさに今回。6年振りに行ってきました。
2021年7月24日~25日 鳥海山 山小屋泊登山(1日目)
鳥海山に登る場合、夏のシーズン中だけ近隣の酒田駅、遊佐駅、象潟駅あたりからバスが出ているので、それを利用すれば公共交通利用でもアクセスは可能です。ただ、どのバスも事前予約が必須なのと料金が割と高め。そして、いずれの駅に行くにも日本海側なので電車でもなかなか行きづらいところです。
前回は象潟駅まで夜行バスで行って、そこからブルーライナーという登山バスで鉾立登山口まで行きましたが、今回は酒田駅まで夜行バス、そこからレンタカーを使って鉾立登山口まで行きました。
そんなわけで6年ぶりの鳥海山・鉾立登山口にやってきました。
酒田駅からは40分程度で着く距離です。高原の駅、と書いてある通り、すでに標高は1150m。鳥海山の中腹まで一気に上がってこれます。
レストハウスもあって駐車場もかなり広いのですが、連休とあってビッシリと車が埋まって路駐も発生してました。
私は現地に着いたのが10時頃だったので、早めに下山し終わった人といい感じで入れ替われたのですが、、、
御覧の通りガスっております……。
雲が取れることを信じて10時半ごろに登山開始。この日は山頂の山小屋までなので、行程としては4時間程度。この時間でも十分間に合います。
登山口のお坊さんに一礼して入山。
鉾立コースはいくつかある鳥海山の登山ルートの中でも一番人気。
登山道がよく整備されているので歩きやすく、なおかつ序盤は観光客でも散策できるような道になっています。
観光目当ての方は登山道を数分上ったところにある展望台を目指すのがいいかと思います。この時はガスっていて何にも見えませんでしたが。
30分も歩けば、あたりの風景は東北らしい雄大な風景へと変わっていきます。
こういった穏やかさこそ、東北の山という感じ。
鉾立ルートであれば、最初から最後まで展望がよく、樹林帯に包まれるということはありません。
足元には早くも花が咲き乱れる。チングルマの群生は至る所にありました。
雲があたりの景色を遮っている時間帯は足元の風景を見て楽しむ。
進むにつれて徐々に青空が見えてきた。
沸き上がる雲と草原、雪も所々に残っていて、まさに夏山という感じ。
登山口から1時間ほどで賽の河原に到着。
雪解け水が流れる、序盤のオアシス的な休憩ポイントです。
ここの水量は時期によって増減しますが、7月中であればまだまだ豊富に流れてます。
鉾立ルートの場合、ここが唯一の水場となるので、必要であれば確保しておきましょう。(小屋にも水場はなく、有料となります)
自分は必要な分は全部担いで持ってきましたが、そのせいでこの段階で結構疲れております……。山頂の御室小屋は新型コロナの影響で寝具を持参、かつ素泊まりだったので、テント泊に近しい重量でした。
登山道は依然、歩きやすい道のり。急登と呼べるような箇所もなく、荷物さえ軽ければ本当にのんびり歩けます。
青空に加えて太陽の光も感じられ、少しずつ希望が見えてきた。
早いものでチングルマはすでに穂の姿になっているものもたくさんありました。
山の夏は短いというけれど、それをひしひしと感じます。
整備された道をのんびりと登っていく。時間に余裕があるというのは精神的に凄い楽。前回のような往復夜行バスの0泊3日行程なんて、もうできないかもしれない……
鳥海山は花の百名山に選定されているだけあって高山植物も豊富で、終盤まで尽きることがないです。
蝶々がクルマユリの蜜を吸うメルヘンな光景も広がっていた。
この蝶はアゲハチョウですか…?
→Twitterで「アサギマダラ」という蝶だと教えていただきました。ありがとうございます!(鬼滅の刃にも登場してるようで)
こうして12時過ぎ、中間地点の御浜小屋に到着。
トラックの荷台を倉庫に活用するという、リサイクル精神も感じられる山小屋です。この小屋も人数は絞っていますが、予約すれば宿泊も可能。
そしてこの小屋の目の前には、鳥海山のシンボルともいえる存在がいます。
それがこちらの鳥海湖。小屋から見下ろす位置にある火山湖です。
ガスっていたので心配しましたが、湖まではしっかりと見通すことができました。
湖の周りは一面お花畑で、特に黄色いニッコウキスゲの群生が目を惹きます。
ここからの景色は2日目の帰りが特に素晴らしかったので、また後ほど。
鳥海湖の周りで言うと、この紫色のハクサンシャジンも印象的。
前回登った時も、この花の群生はよく覚えていました。
小屋から少し行ったところが御田ヶ原。
ここを過ぎたあたりから鳥海山の本丸が見えてくるのですが、それがもう感動的な光景なので気合を入れてみてやってください。
その景色がこれよ!
↓↓↓
……ガスっとるがな。。。
本当なら目の前にドーン!と鳥海山が聳えているはずなのですが、あいにくの曇り空。山の上にいながら山が聳えているというのも変な感じですが、本当に目の前にどっしりと構えているのでぜひ見てやってください。
ここも2日目の帰りに期待していた景色を見れたので次回に回します。
天気が良くない時は花を愛でる。
ヨツバシオガマとかミヤマリンドウとか、色々咲き乱れています。
陽が差したり小雨が降ったりと変わりやすい天気。
先行く稜線はなだらかでありながらも、ここから山頂までは割としっかりとした登りが続きます。
鳥海山のお花畑は本当に凄い規模。
1種類の花が群生を咲かせているというよりも、色々な花が所狭しと咲き乱れている感じです。
これぞ東北の山と言える緑豊かな風景。
3000m級のアルプスとはまた違う、森林限界を超えた山の景色がここにはあります。
ここだけ切り抜けば、近隣の月山にも近しい雰囲気ありますね。
そして奥に見えてきたのが目指す鳥海山の頂。
ここに来てようやく山頂方面にも青空が広がってきてくれました。
歩き始めて3時間ほど経ちますが、山頂までの道のりはまだまだ遠い。
ここら辺で見事なお花畑を見せてくれたのはハクサンイチゲ。
高山植物の中でも割と早咲きの、6月あたりにピークを迎える花ですが、7月下旬でもまだまだ綺麗に花咲かせていました。
振り返って見る景色がまた壮大。
パッと見、山脈にも見えるほどいくつもの山が連なっていますが、これを一括りに「鳥海山」というんだから、この山のスケールはデカいです。
7月下旬でもまだ雪を多く残すのも特徴的。
さらに歩みを進めていくと、穏やかな稜線風景からは一変して迫力ある岩壁が姿を現します。
これは外輪山の絶壁。
鳥海山の実体は活火山であり、ここからはガレた岩場や岩壁ゾーンに入っていきます。
外輪山と千蛇谷の分岐点。
どちらのコースを歩いても周回できるようになっていますが、山頂の山小屋、もしくは最高地点の新山を目指すのであれば千蛇谷ルートが早いです。
外輪山コースは下山時に歩くことにして、千蛇谷へと向かいました。
千蛇谷ルートというのがこちら。
谷間に残った雪渓を登りつめた先に山頂が見えています。
雪渓にはチラホラ人の姿も見えてる。
まずはあの雪渓に取り付くために細い道を下っていきます。
時刻はすでに13時半過ぎ。この時間ともなれば下山者とすれ違うことの方が多くなってきます。
雪渓に降り立つ。
前回の記事でも語った通り、雪渓というのはあまり好きではないのですが、ここの雪渓は大して距離もなく、傾斜も緩やかなのそこまで難しくもないです。
対岸に渡れば夏道ルートで歩くことも可能なので、どちらか好きな方をお選びください。
私は夏道ルートを選択しましたが、すぐに暑さに嫌気がさして雪渓に下りることにしました。
やはり雪の天然クーラーは捨てがたい。
傍から見ると御覧のような絶壁が間近に控えています。
真上にあるのが外輪山。そのすぐ直下を歩くのが雪渓ルート。
迫力ありつつも落石が至る所に散乱しているのを見ると、なるべく早く通過したほうがいいのかもしれない。
あんなデカい岩が落ちてきたらひとたまりもありません。
お急ぎください。
雪渓を登り切ったところでしばし休憩。
小屋はまだ見えませんが、この斜面を登り切ったところにあります。
ここから眺める外輪山がまた凄い景色。
周囲を覆うように立ちはだかる岩の壁。明日はあの上を歩いて下山していきます。
空もだいぶ青空が見えてきて、夏らしい雲が広がっていました。
雪渓が終わってからも意外としんどい。
ここら辺もお花畑なので、周囲の花を愛でながら休み休み進みましょう。
こうして15時、山頂直下の御室小屋に到着。
鳥海山大物忌神社と書かれている通り、神社本殿のある山小屋です。
宿泊する場合は事前予約必須。新型コロナの影響で、他の山小屋と同じく宿泊人数を絞って営業していました。
寝具は持参なので寝袋やマットは自分で持ってくる必要がありますが、スペースは十分確保してくれて快適そのもの。
2Fの端っこをのびのび使わせてもらいました。連休でありながら、泊まっていた人数はそれほど多くはなかったです。
思っていたよりも時間かかりましたが、とりあえず無事に本日の行程が終了。
天気も良くなってきたので、外でコーラとおやつでしばしのんびり過ごしました。
小屋の鳥居。
雲の上に建つ神社というのは、それだけで神々しい。
だいぶ天気も回復してきたので、この日に山頂まで登ってしまうことにしました。
見ての通り小屋の裏手は岩場になっていて、ここを登っていきます。
手足を使って登っていく岩場ゾーンですが、目印は明確に付けられているのでそれに従って進めば大丈夫です。
小屋に宿泊していた小学生くらいのチビッ子も頑張って登ってました。自分なんかより格段に軽快でしたよ。
少し登ったところから見る山頂御室小屋。
御覧のように岩に囲まれた、なかなかの場所に建てられています。
天然の水場はないので、水は買うしかありません。
そしてよく覚えているのがこの岩の隙間を縫うように進んで行くところ。
自然にできたのか人工的に切り開いたのかわからないですが、岩壁に囲まれた細い谷間をすり抜けるように進んで行きます。
どこぞのアトラクションのような入り組んだ迷路なコース。なかなか面白い。
そこを抜けるとひたすら岩場の登山道。
まさに岩の宮殿。マーカーの矢印がなければ迷ってしまうほど、辺り一面岩だらけです。
北アルプスの穂高岳にも通じるものがあります。
その岩場の中の小高いピークが山頂。鳥海山・新山です。
この手書きの2236mと新山の文字は、6年経っても変わらずそこにありました。
新山のすぐ向かいにあるのが七高山。外輪山の最高峰であり、ちょうど真東にあるので日の出を眺める絶好の展望台になっています。
翌朝はあちらでご来光を迎えました。
山頂からの景色で特筆すべきは、やっぱりこの岩稜帯。
序盤の穏やかなお花畑や稜線が嘘のように、岩々しい景色が広がっています。
これは間違いなく北アルプスの穂高岳に匹敵するわ。
鳥海山の面白いのがまさにここで、標高を上げるにつれて景色が一変、色々なフィールドを楽しめるところにあります。
この山頂部も周回できるようになっていて、下山路は胎内くぐりの方へ抜けました。
御覧のように、こちらも狭い岩の隙間を進んで行きます。メタボな人は苦労するかもしれないので、鳥海山にお越しの際はできるだけウェイトを減らしておきましょう。
岩の奥には小さい祠があるので、拝んでおく。
胎内くぐりって生まれ変わりができる場所なんだっけ?良く知らないですが、ここ最近、上司との人間関係含めて仕事に対するストレスが半端ないので、浄化する意味も込めて神妙な面持ちで通らせていただきました。
少し気が楽になった気もしますが、この記事を書いている時点では職場の状況は何一つ変わっていないのをご報告しておきます。
帰りは短いながらも雪渓箇所を下山することになります。
岩場からこの雪渓に降り立つあたりが少し迷うかもしれないのでお気を付けください。降りれるポイントで降りてしまいましょう。
のんびり1時間ほどの山頂周回を楽しんで、山小屋へ戻る。
この時間に縛られない感じが凄くいいわ。日帰りでは味わえないゆとり感。
夏らしく、目の前に積乱雲が立ち込めて、これはこれでなかなかの迫力でした。
特に雨に降られることもなくこの雲は消え去りましたが、何というか、こういう雲の景色が見れるのも夏山の魅力ですね。
この後は外に出て景色を楽しみながら夕食の時間としました。
素泊まりだったので食料は全部自分で持ってこないといけないですが、小屋の食事の時間に縛られずに自由に過ごせるって言うのはいいですね。
雲の流れも何だか幻想的でしたよ。
18時半を過ぎるとだいぶ陽も西に傾いてきました。
この頃になるとすっかり天気も回復。陽が沈む方向には日本海が広がっています。肉眼では離島の「飛島」も見えました。
夕焼け時の景色は日中とはまた違った印象を受ける。
エモい、ってこういう景色を言うんだろうな。
黄金色に輝く外輪山と残雪、稜線風景がこの上なく美しかったです。
日本海に夕日が沈んで行ったのは19時頃。
この景色が見たいがためにわざわざ小屋泊で登りに来たというのもあります。
無事に見れて本当に良かった。
この日、御室小屋に泊まっていたのは30人くらいだったのかな。
皆、夕食を食べ終えて夕陽を見るために外に出てきました。
どこの誰かもわからない、名前も知らない人たちですが、こうして同じ景色を共有できるというのも登山の醍醐味だったりする。
空の色が刻々と変わり、そして夜を迎える。陽が沈んでからの空の色彩も美しかったです。
辺りが暗闇に包まれるまで景色を楽しんでこの日が終了となりました。
6年振りの鳥海山。
1泊2日の山小屋泊で登りに行った1日目、序盤こそ怪しい雲行きではありましたが、小屋についてからの展開は願っていた通り、素晴らしいものになりました。
やっぱり小屋泊で登りに来たからには夕陽や朝日は見たいものです。
山頂まで登ってしまったので後は下るだけですが、2日目もまた違った絶景を味わえて新鮮な感動を覚えるものがありました。
翌朝、薄暗い中からご来光を求めて七高山へ向かうところからが次回のお話。
【日程】
2021年7月24日
【コースタイム】
10:25 鉾立登山口
11:30 賽の河原
12:10 御浜小屋
13:35 外輪山・千蛇谷分岐
15:00 山頂御室小屋
16:00 鳥海山・新山
16:40 山頂御室小屋
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