GWのニュージーランド、旅の本命でもあった2泊3日のルートバーントラック。
2日目はマッケンジー小屋をスタートしてフォールズ小屋まで。展望の開けた森林限界の上をひたすら歩くという、ルートバーンのメインどころの区間。中でも見どころだったのが本ルートの最高地点でもあるコニカルヒルからの大展望!
雪を被った神々しいまでの山岳風景を存分に堪能することができました。湿原も多く、水や緑の豊かさも感じられた2日目の記録。
クイーンズタウンからバスに乗って、ルートバーン・トラックの登山口であるディバイトからスタート。
キーサミットからの展望や苔むす森のトレッキング、アーランド滝と虹のアーチ、夜の星空など、見どころがたくさん詰まった1日目。
充実なまでの登山内容となった初日でしたが、ルートバーンの真骨頂としては2日目の区間。
そこには、1日目を凌ぐさらなるニュージーランドの大自然が待ってました。
5月1日 ルートバーントラック 2日目
まず最初に、4月が終わってこの日から暦は5月。
そうです、『令和』の幕開けでございます!日本から遠く、ニュージーランドの山の中からも、平成の終わりを偲び令和の始まりを祝いました。
そんな令和のスタート場所となったのは、標高約900mの地点にあるマッケンジー小屋。
季節は秋から初冬を迎えつつある時期でしたが、夜間もそこまでの冷え込みはなく、ぐっすりと眠れました。備え付けの分厚いマットレス、いと心地良し。
小屋の目の前に広がるマッケンジー湖から、遠くの山のモルゲンロート。時刻は朝の8時。5月ともなれば、これくらいの時間でようやくこの明るさになります。
風もなく穏やかな朝。青空も広がって、今日も良い一日になりそうな予感がしました。
避難小屋とは思えない快適さでしたが、明け方はやたらうるさい動物の鳴き声で目が覚めました。外に出てみたら、犯人発見。
大きめの鳥が小屋の周りにわんさかいました。
カカというニュージーランドのオウム。トレイル中は小鳥としか出会わなかったので、それと比較するとえらくデカい。
人間の食べ物を狙っているのか、小屋の周りをウロチョロ物色するオウムたち。羽の柄が独特で、翼を広げると鮮やかなオレンジ色をしてました。
朝は炊き込みご飯とお味噌汁という、純和風な朝食でスタート。
やはり米は旨い!パンだとすぐお腹空くでしょ、って欧米人を見ていていつも思う。よくあれでスタミナ持つなぁ~と。
米こそ登山に必要不可欠、おにぎりは最高の発明品、そう思った令和最初の朝。
9時過ぎ、マッケンジー小屋をスタート。
日本の登山スタイルからするとかなりゆっくり目の出発ですが、周りの人たちもだいたいこれくらいに動き出してました。行程もそこまでシビアなコースタイムではないので、あまり先行き焦らずに今日も行きます。
マッケンジー湖からの山岳風景。
水面に鏡のように映し出された山と空がこの上なく美しい。
森の緑も綺麗なマッケンジー湖。
小屋一帯が一つの観光地として成立するくらい、自然豊かな環境でした。
それと写真は撮らなかったですが、明け方の湖畔で地元の学生っぽい集団がマオリ族の伝統舞踊・ハカを踊っていて、それが迫力あってカッコ良かったです。
あぁ、これが本場のハカか~……と。
ハカとは↓
オールブラックスもカッコええ…(こんな感じで威嚇されたわけじゃないぞ)
お返しにソーラン節でも披露しようかと思ったけどやめました。
最初は前日に続いて苔の緑が豊かな森。
でも、それもすぐに終わって展望の良い道になります。この日の行程はほぼ森林限界を超えた場所でのトレイル。森歩きは最初の数分で終了です。
10分も歩けば視界が開ける。
ここからしばし九十九折りの単調な登り坂が続きますが、序盤から景色が目まぐるしく変貌する。
前、横、後ろ、どこを見ても最高の景色。
マッケンジー湖も眼下に見えて、エメラルドグリーンに輝く水の清涼感がここからでもわかります。先ほど出発した山小屋も小さく見えました。
景色が開けて早々、ずっと気になっていたあの突出した岩の山。エメリーピークという山だそう。見た目のインパクトが大きく、形からして登るのはかなり難易度高そうな……
ルートバーンを歩いていて感じたところですが、ここら辺は個性的な形をした岩山が多く見られます。綺麗な稜線でつながっているというより、1つ1つの山がゴツゴツと隆起して存在感を放っている感じ。
穂高連峰が好きな人には唸るものがあるのではなかろうか。
まだ歩き始めて1時間も経っていないですが、すでに景色は最高潮。
写真撮影も止まらない。見た目的にも、ほんのりと雪を被っているのがやっぱり素敵です。
マッケンジー湖とエメリーピーク。
一晩お世話になったマッケンジーともここでお別れ。湖自体はそこまで大きくはなかったですが、屈強な岩山と森に囲まれた、どこか秘境感もある雰囲気が良かったです。
坂を登り切ると、景色は広大な草原風景へと変貌。
ここが オーシャンピーク・コーナーという展望台。
目の前に広がるダーラン山脈、眼下にはホリフォード渓谷という絶好の展望デッキ。
オーシャンピーク・コーナーという名前の通り、遠くにはタスマン海も見渡すことができます。
オーシャンピーク・コーナーは広く、湿原になっているので池塘も点在。
360℃の展望が見れる絶景ポイントなので休憩するには最適な場所になっています。
オーシャンピーク・コーナーでしばし休憩。
昨晩、小屋にはたくさん人がいましたが、ほとんどが逆ルートで歩く人たちだったようで、こちら方面に登ってくる人は他に誰もいませんでした。
ツアーでは自分たちと同じ方向で歩くことになっているようですが、5月のオフシーズンに入ったのでそのツアー団体も一切いない。この時期は個人ウォークのみなので、ルート上はとても静かです。
30分ほどのんびり休憩して先へ。
今日のルートも決して短い距離ではないですが、これも海外スタイルか。1つ1つのポイントをじっくり楽しみ、ゆっくり進む。
ここから先の区間がホリフォード・フェイスという縦走トレイル。
左手にホリフォード渓谷を眺めながら、山の中腹を横切るように進んでいきます。
ここら辺にも道脇に湿原が広がっていて穏やかな風景。
ひたすら森林限界の上を歩く天空街道で、ルートバーントラックの中でも最も展望に恵まれた区間とされているのがこのホリフォード・フェイス。(って、現地でもらったガイドマップに書いてありました)
道も平坦なので全く疲れることなく歩けます。
時折川が流れて天然の水場もあったり。
水が本当に綺麗で美味しい。この日も道中の水を美味しく頂きながら進んでいきます。
GWのルートバーントラックは初冬に入るので花はほとんど見れないですが、デイジーが一輪だけ残っていてくれました。
夏のハイシーズンはここら辺は高山植物もたくさん見れるそうなので、その時期にもぜひ歩いてみたい。
ホリフォード・フェイスの縦走路をひたすら直進。
山を見上げたり渓谷を見下ろしたり、道はほぼフラットなので展望を楽しむのに専念できる。
ニュージーランドのトレイルスタイルなのか、あまりピークにこだわることはないようで、山頂を繋いで歩くようなルートにはなっていません。見上げれば近くに山はたくさんありますが、特に山頂に逸れる脇道のようなものもなかったです。
1時間半ほど進んで、山の反対側へ向けて登り始めるとホリフォード・フェイスの区間も終了。
ただ、本当の絶景が待っているのはこの先。
ハリス・サドルの避難小屋に到着。ルートバーントラックの中では最も標高の高い地点。それでも1300mくらいだけど……。
避難小屋なので宿泊はできないですが、右の建物はツアー団体御用達のものらしく、中にガスコンロが備え付けられていました。ここで暖かい飲み物でもおもてなすんですかね。シャワー・暖房完備のロッジといい、ツアーで来れば至れり尽くせりの待遇を受けられそうですが、果たして縦走トレイルとしてそれで満足なのかは別問題。
小屋の裏側にあったトイレだけお借りしました。
1つ1つの看板もおしゃれに見えて写真に収めてしまう。
今日泊まるルートバーンフォールズ小屋の文字も見えてますが、ここでしばらく休憩&寄り道。
お昼ご飯は1日目に続いてニュージーランド式ラップロール。
手軽に食べれてローコストハイクオリティーな美味しさ。 レタスを丸ごと持ってきた甲斐がありました。
このハリス・サドルは避難小屋もトイレもあるので、休憩するには最高の場所です。行き交う海外トレッカーも数名おりました。
海外の人の歩いている姿はどうしてこう画になるのだろうか。パッキングが上手いのか防寒着が少なく済むのか、ザックも割と小さめが多かったです。
ハリス・サドルからは、コニカルヒルというピークへ往復することができるようになっています。片道1時間ほどですが、もちろん行くぞ。
目の前の岩山を左側から回り込むような形で登って行きます。山頂はあの岩山の奥なのでここからでは見えません。
この日唯一のピークハント。そして今回の行程で最も標高が高い場所へ向かう。
登り始めて早々、恐れていた通り登山道に白いものが混ざり始めてきた。
おそらく2日前に降った雪。カッチンコッチンに凍った登山道。
アイゼンを日本から持ってきていなかったので、ここら辺は若干怖く、ゆっくりと進みました。
5月にもなればルートバーンでも雪が降ってもおかしくないような季節。(チェーンスパイクくらいは持ってくれば良かったぜ……)
これくらい雪が乗ってくれると逆に歩きやすいので助かる。
見ての通り、ここら辺の登りはコニカルヒルの陰になっているので、雪も溶けずに多く残っています。
丘(Hill)という名前が付けられていますが、登山道を見る限りでは立派な岩山。道もこれまでで一番急です。
それでも登るにつれて景色はさらに壮大さを増していく。
突如目の前に現れた、またしても個性的な岩山。日本で言うところの北アルプスのジャンダルムではないかっ!
眼下にはまた新しい湖、ハリス湖が登場。
これまで見たエメラルドグリーンの湖とは少し違う、深い濃紺な色をしていました。
後ほどあの湖の淵を通って奥の平原の方へ下っていきます。
思わぬ雪山登山となってますが、気分は最高潮。
天気もまだ持ってくれている。
14時40分、コニカルヒル山頂に無事到着。
登り道は完全な岩山でしたが、山頂まで来てみると丘という名の通り広々とした場所になっています。
だいぶ遅い時間でしたが、先行者がお一人だけいました。
ただ立っているだけなのにカッコいいぜ、その後ろ姿。
そして景色が壮大。もう”超”が付くほどの大絶景!
標高1515m地点。日本で言えば全然高くない場所ですが、ルートバーントラックの中では歩いてこれる最高地点。日本の1500m感覚とはまるで違う壮大な景観が広がっています。
先ほど見たニュージーランド産のジャンダルム。
岩山好きであれば、喉から手が出るほど登りたくなるシルエットではなかろうか。
岩山苦手の自分にとってはこうして眺めるだけで十分満足であります。
ハリス湖。その周りと取り巻く山々も美しい。
ここら辺まで登ってきてしまえば、樹林帯は全くなくなり、草原と岩山だけの世界になります。
反対側も山だらけ。
1つ1つの山の名前なんて全く分かりませんが、やはり尖った山が多く個々の存在感が際立ってます。
画になる海外トレッカー。
コニカルヒル、素晴らしき展望スポット。
やはりコニカルヒルからは、すぐ近くにそびえるジャンダルムさんが一押し。
写真では伝わらない気がしますが、物凄い迫力があります。標高で言えばあの山も2000mちょっとしかないんだろうけど、雪も被って高峰感満載。
すでに時刻は15時。もう2時間もすれば日没ですが、心ゆくまでコニカルヒルを満喫する。
日本の山に登っていると、下山時に「えっ、この時間から山頂に向かうの?」っていう海外観光客をたまに見かけるけど、それと同じようなことを自分たちはやってしまっているな。
風がなく日差しも暖かい心地よい空間。
凍結した岩道に出くわしたときはちょっと焦ったけど、上に登ってきてしまえば平和な山頂でした。
雲海と言う名の雲が徐々に出てきた。
メインどころの1日目、2日目を快晴の中で歩けて本当に良かったです。現地ガイドもルートバーンでこの快晴が続くのは稀と言っていたので、タイミング的には最高だったと思います。
日差しが強烈で日焼け止めも大活躍でした。
真っ白に凍結した池とジャンダルム(あの山の正式な名前が知りたい…)
時間の限り留まりたいと思えたコニカルヒルでございました。
雲も湧いてきたので、頃合いを見計らって下山開始。
凍結していてアイゼンもなかったので下りの方が要注意でしたが、コケることもなく無事に先ほどの避難小屋まで降りられました。
実際、この雪で引き返した人もいたようですが、彼氏を置き去りにして一人でピークを目指しているタフな外人女性もいました。
ザックを回収してルートバーントラックの本ルートを再び進む。
ハリス湖の淵を歩いて対岸の平原を目指します。
若干ガスが出てきましたが、まだまだ視界は良好。
湖を抜けると景色は変わって湿地エリアへと突入。
岩のトンネルが大湿原の入口
この湿原地帯がまたすごい広さで感動ものでした。
先ほどの山岳風景と比べると見劣りするかもしれませんが、実際に歩くとここら辺も一つのハイライトと言っていいくらいの壮大な自然ワールド。こういった場所の方が、どちらかというと「ロード・オブ・ザ・リング」っぽい世界観な気がします。
ニュージーランドの自然1つ1つが偉大。
木道も設置された1本道を進んでいく。
振り返って見上げる岩山。この湿原を取り巻く環境もすごい景色。
もう道は下山路に入っていて、この先登るようなところはほとんどありません。トレイルとしては3日目もありますが、ルートバーントラックの見どころとしては、これであらかた終了。
しばらく下っていくと小屋発見。
奥の草原地帯は翌日歩くところになります。
小屋のすぐそばにあったのがルートバーン滝。
落差はそこまでないですが、いくつもの滝が流れ落ちてて、轟音とどろかせるなかなかの迫力でした。
17時15分、どうにか暗くなる前にルートバーンフォールズ小屋に到着。ここもツアー御用達の綺麗な建物(ガラス張り)が手前にありましたが、自分たちが泊まるHutのほうも十分綺麗でした。
ここも避難小屋の形態ですが、寝床スペースはしっかりしています。
そして1日目のマッケンジー小屋よりも広い。
こんな感じで2段ベッドタイプ。マットレスはマッケンジー小屋と同じように厚めのものが備え付けられています。寝袋だけ持参すればよいというのが本当に助かる。
事前のDOCでの手続きでは2日目は混むって言ってましたが、実際はそれほど混まずに空きスペースも結構ありました。
オフシーズンのこの時期は、先着順で好きな場所に寝ることができます。
別棟のキッチンスペース。
5月に入ったのでガスコンロは撤収されていましたが、水道は普通に使えます。そして電気が付いていたのは嬉しかった。内装も普通の小屋と変わらない清潔感。
食堂ロビーもこんな感じ。ストーブも点いていて、1日目のマッケンジー小屋よりも格段に綺麗な小屋でした。
ルートバーンフォールズ小屋、すごいよ。宿泊料15$(約1100円)の価値は大いにありました。 15$というのはオフシーズン特価で、シーズン中であれば1泊10000円くらいします。避難小屋泊としてはめちゃくちゃ高ぇ、、、
19時にスタッフの人がやってきて宿泊者リストのチェック。気さくな方でした。前日みたいな長い談話があるのかと思いきや、5分くらいの説明ですぐに終わり。昨夜と同じく大貧民大会へ移行しましたとさ。
Welcome RouteBurn
1日目に続いて好天に恵まれた2日目も終了。
ルートバーンの中でも一番の見どころポイントを歩いた2日目の行程でしたが、絶景続きで素晴らしいトレイルを堪能できました。コニカルヒルは思わぬ雪道に一部苦戦もしましたが、雪のおかげで周りの山々も見事な雪景色。満足です。
明日は距離も短く基本的に樹林帯の中を下山するだけ。旅行も後半戦に突入していきます。
コメント
みやっち様
貴重な報告、そしてまたどこをとっても美しい写真に感激しました。やはり日本の北アルプスあたりの山とは違うような気がしました。それにつけても「避難小屋」の洒落ていること、日本の避難小屋も綺麗にはなっているようですが、その名の通り「避難小屋」ですもんね。もし苔の森、鬱蒼とした森林の中をゆく写真があれば期待しちゃうんですが。
koji – kam様、こんばんは。
ブログ読んでくださってありがとうございます。おっしゃる通り日本の山の雰囲気とは全然違いました。避難小屋もしかり。
街を少しでも離れればもう自然しかないので、登山口に立った時点ですでに日本よりも山深さを感じた気がします。
苔の森がお好きであればなおのことルートバーンはおすすめかと思います。行程で言えば1日目と3日目が多かったですね。だいぶ端折ってしまいましたが、特に1日目の後半は緑豊かな森をひたすら歩く道で気持ち良かったです。3日目もわずかですが写真を載せたいと思っております。