新潟の八海山に登ってきました。
歩いたのはデンジャラスな岩場・鎖場が続く八ツ峰ルート。ビビりな自分には難易度高めでしたが、雲をまとった神々しい岩峰が絶景でした。
さらに10月中旬は紅葉がピークを迎える時期で、美しく彩られた山頂の岩稜帯が素晴らしかったです。
秋の登山を満喫できました。
2025年10月17日【新潟】八海山 秋の紅葉登山
日本酒で有名な八海山。
日本二百名山にも選ばれている新潟県を代表する山の1つ。標高こそ1778mとそこまで高い山ではないですが、その実体は鋭利な巨岩が乱立する岩峰群。危険な奴です。
2013年に一度登りに行ったことがありますが、その時は11月の晩秋で山頂部の紅葉はほぼ終わりかけ。
今回は紅葉ピークを狙って12年ぶりに登ってきました。
八海山へ公共交通でアクセスする場合、最寄りとなるのが六日町駅。
ここから八海山スキー場(ロープウェイ乗り場)までのバスが出ています。12年前は8時30分のちょうど良い始発便があったのですが、いつだったかの時刻改変で現在の始発便は9時40分。これだとスタートが10時過ぎになってしまうので、仕方なく行きだけタクシーを利用。
相乗りできたらいいな~、なんて思って六日町駅を降りてみたけど登山客は自分だけでした。
六日町駅から八海山スキー場までのタクシー運賃、5700円でございました。
この出費に見合う景色が用意されていると信じて、ロープウェイへと乗り込みます。ちょうど良いタイミングで9時出発に乗れました。基本的に00、20、40分という20分間隔で運行されています。
文明の利器を駆使して標高を稼ぐ。
前回は11月に来たのでスキー場周辺の紅葉が綺麗でしたが、10月中旬ではまだ麓の方は色づいてません。
その分、観光客もまだ少ない時期なので、登山者にとっては狙い目な時期かと。
7分ほどの乗車時間であっという間に山頂駅に到着。
この遺跡感ある山頂駅の建物、要塞にも見える無骨な感じがカッコ良かったぞ。
こちらの鳥居をくぐって登山道へと入って行きます。
現在の標高は1147m。八海山の4合目になります。
スタート後、しばらくは緩やかな登山道。木道が敷かれた平坦な箇所もあります。
雨上がりのこの日は泥濘があったり、木道も部分的に滑りやすかったです。
尾瀬のこの手の木道で何度すっころんだことか。
徐々に傾斜がきつくなってきますが、その分視界が開ける箇所も増えてきて樹々も綺麗に色づいてきます。
この日は周りを流れる雲が多くて、それが幻想的な光景を生んでいたのをこの後知ることになる。
樹林帯の登りを経て女人堂に到着。ここが6合目。
無人の避難小屋ですが内部は結構綺麗で、トイレのほか備え付けの毛布なんかもありました。
女人堂からの風景がまた素晴らしい!
ここから一層紅葉が映えてきて、草紅葉も相まって見上げる山肌が黄金色に輝いていました。
そして岩山たる八海山の片鱗が見えてくるのもこの辺りから。
特に薬師岳山頂直下には、鎖が複数本垂らされた岩場が待ち構えています。
足元が滑りやすくて、ここは特に下山時が要注意でした。距離が意外と長いので、すれ違う際はお気をつけください。
急登の岩場を登った先が8合目の薬師岳。奥に祀られている像は太郎坊大神。
古より山岳信仰として崇められている八海山、この先待ち構える八ツ峰ルートの各山頂にもたくさんの仏像が祀られています。
そして、ここでようやく山頂の岩峰群を視界に捉えることができます。
目の前にドン!と立ちはだかる巨大な岩。あちらが八ツ峰ルートのスタート地点である地蔵岳。
ほとばしる雲を纏う姿が幻想的でカッコいい!
後ろを振り返れば見事な雲海。
ちょうど雲と同じくらいの高さだったので時々あたりが真っ白になったりもしましたが、この日はこの雲が良い演出効果となって登山を盛り上げてくれました。
稜線の色付きがどんどん増して紅葉も凄いことになってきます。
正面に見えている建物は千本檜小屋。岩峰アタック前の貴重な休憩ポイントです。
先ほどから雲の効果で奥の岩山が残像のように見えるのが面白かった。
振り返って見る薬師岳の紅葉。
これから登る岩峰群とは違って、薬師岳はこんもりとした優しい山容をしています。
冬の雪山シーズンでも、この薬師岳までだったら何とか登って来れそう。やってみるか……?
9合目の千本檜小屋に到着。
有人の山小屋で飲料水やカップラーメンが買えます。収容人数は少ないですが、宿泊もできるそうです。
ここから先、いよいよ破線ルートである八ツ峰の岩稜帯に入って行くのでここで準備を整えましょう。また、八ツ峰ルートではなく迂回ルートを行く場合も、途中に休憩できるポイントがほとんどないのでここで休んで行った方がいいです。
お守り代わりのヘルメットも被って行ってきます。
まず目指すのは正面に見えている地蔵岳。ここから見ると垂直に近い岩峰でとても登れなさそうですが、裏側から回り込むように登山道が続いています。
少し登ったところから眺める千本檜小屋と薬師岳の眺めが素晴らしい。
紅葉に加えて雲海のオプション付き。八海山自体は標高2000mにも満たない山で、このあたりも標高1600m程度ですが、雲の位置が低かったおかげで綺麗な雲海が見れました。
迂回ルートとの分岐を八ツ峰方面へ。
この急な鎖場を登った先が最初の地蔵岳。
地蔵岳に登頂。
八ツ峰コースのスタート地点ともいえる山です。
名前の通り、山頂にはお地蔵様が多数祀られています。
岩峰なので周囲360℃開けていて展望も素晴らしい。奥に見えているのは越後駒ヶ岳か。
そしてここからがいよいよ本日のメインイベント。
破線ルートになっている八ツ峰コースへと足を踏み入れて行きます。
奥には地蔵岳に似た次なる岩峰が待ち構えておる。
少し歩いた先が不動岳。
ここまではまだ危険個所もなし。
不動岳から眺める地蔵岳。
紅葉と雲海のコラボが素晴らしい景色。
岩峰なので山頂に立つ人の姿がよく分かります。
岩峰に立つ登山者が雲海と相まって凄い迫力。
決して標高の高いところを歩いているわけではないですが、周りが切れ落ちているので高度感が半端ない!
改めて凄いところを歩いていると気づかされます。
不動岳にも立派な銅像や祠が点在。
まだ岩峰の序盤も序盤ですが、ここが山岳信仰として崇められている理由がよく分かる特異な出で立ちをしている八海山。
視線の先には次なるピークが待ち構えています。
不動岳から先がいよいよ危険な岩場、鎖場ゾーンへと入って行きます。
足場こそしっかりしていますが、周囲が切れ落ちた断崖絶壁になっているのでくれぐれもズッコケたりしないようにご注意ください。
八ツ峰ルートの核心部へ。
雲を纏った岩峰が本当にカッコ良くて、少し歩いては立ち止まって見入ってしまいます。
あの出で立ち、まさに北アルプスのジャンダルムを彷彿とさせるぜ。(※ジャンダルムに登ったことはありません)
ここから先、鎖場の上り下りの連続。
当たり前ですがこの手の鎖場は下りが要注意で、垂直に近い岩場の下りを強いられます。
特に入り口部分は下の足場が見えづらいから怖いわ。
下りるのに必死な鎖場。少し離れてから見るとよく分かる、凄いところを下ったんだなと。
正面に見えるのが先ほどの不動岳。八ツ峰の中でもずっしりとしたヘビー級な山容をしています。1つ1つの岩峰の姿が微妙に違うのも面白いポイント。
そして何より紅葉が素晴らしく綺麗。やはり岩峰と紅葉の相性は最高ですね。
次なるピーク五大岳に到着。別名、七曜岳。
連続する岩峰ではありますが、それぞれの山頂はそれなりに平らではあるので休憩することは可能です。
なんたって山頂に着いたってことは、その先には下りが待っているってことなので。
こんな垂直の鎖場を登ったり下ったり。
足場はしっかりしているので登りは意外とスイスイ行けるもんですが、やっぱり下りは苦手。
おそらく傍から見ればへっぴり腰スタイル炸裂だったと思いますが、前後に人がいなかったのが幸いです。
先へ進むにつれて高度感もどんどん増してくる。
紅葉も中腹まで色づいているのが見えて、本当に良きタイミングで来れたなと思いました。
しかもこの雲海。この雲のおかげで、「俺、高いところで凄いことやってるじゃん」という気持ちにさせてくれます。
次なるピークに到着。
ここは特に名前が付けられていなかったと思うのですが、この山頂も傍から見れば凄い岩峰というのが直後にわかります。
例によって一つ山を越えたら登り返し。
着地ポイントが見えない鎖場を下って行きます。
こういう岩場は足を使えなんて言いますが、それができれば苦労はしない。自分みたいなビビりは腕力をフル稼働させて下って行くしかない。
それゆえ、下山後には腕がひどい筋肉痛になりながらこのブログを書いているわけであります。
先ほどの岩場を振り返って見る。
「自分、よくあんなところ下れたな」と思うくらい垂直の岩壁。
山頂部から垂らされた1本の鎖を頼りに頑張って下ってきました。
例によって岩峰に立つ登山者が絵になるので何度も撮ってしまう。
雲の効果で迫力も数倍増し。紅葉も綺麗です。
この日は平日ということもあって登山道が比較的空いていたのも良かったです。自分が一息ついて振り返るあたりで次の登山者が登場してくれる、そんなほどほどの距離感。
白川岳に到着。
登っても登っても、山頂に着けば次なる岩峰が見えてきてループしているような不思議な感覚。
もう何個目かわからないジャンダルム。
垂直の鎖場はもちろん危険ですが、何気ない岩場のトラバース路も要注意。
こんな感じで切れ落ちているので、足を滑らせたら真っ逆さまに谷底まで滑落する高度感があります。
この日は気温も高くて汗ばむ陽気でしたが、終始かいていたのは冷や汗だったかもしれない。
ジャンダルムの残像拳、再び。
雲を纏う岩峰はカッコ良さと怖さが半々。迫力満点でございます。
紅葉と岩峰。
緊張感が途切れない八ツ峰ルートでも楽しく歩けているのは紅葉のおかげ。
見たい景色が見れてもうだいぶ満足してますが、まだ先は長いので頑張ります。
摩利支岳に到着。
岩場苦手のポンコツではありますが、後ろの人に追いつかれていないあたりは順調に登れているんだと思います。
タクシー使ったおかげで時間的にも余裕があるのは大きい。
少し先に2人組の登山者がいてくれて、どこをどう登るかの予習をしっかりと立てれるのも良かったです。
一番最初の地蔵岳から先行してくれていて、金魚のフンのようについていく私でございます。
この辺りになるとだいぶ見慣れてきた垂直の鎖。
足元が見えないのは不安ですが、やっぱり繰り返せば慣れるってもんで、ここらあたりはそこまで怖がらずに下りれるようになってました。
必死で鎖場を下っては、少し先から振り返って「おぉ!頑張ったじゃん自分」の繰り返し。
1つ1つが鋭利にそびえる八海山の岩峰たち、これぞまさに新潟のジャンダルムと言えよう。
と、ジャンダルムに登ったことがない自分が好き勝手語っております。
終始、高度感も半端ない。
市街地とは反対側の景色は本当に山深い。眼下に見えている谷底なんて人がほとんど立ち入らない世界なんだと思います。
そんなところへ滑落でもしたら大変なのでくれぐれもご注意ください。
こうして八ッ峰ルートのゴールでもある大日岳に到着。
不格好ながら無事に踏破した自分を、八海山大神様の鋭い視線が出迎えてくれました。
右に見えている登山者は自分を先行してくれたおじさま方。お疲れ様でしたとお声がけ頂きました。
大日岳も御覧のような立派な岩山。
この山さっき登らなかったっけ?というくらい似通った岩峰もたくさんありました。ここの下りの鎖場もなかなかの垂直っぷりなのでご注意ください。
この日、本当に良かったのがすれ違いや追い抜きが一切なくて自分のペースで歩けたところ。腕力に任せて不格好に下る様を誰にも見られなくて助かったわい。
大日岳を下って八ッ峰ルートは終了しますが、この先に八海山最高峰の入道岳があるのでピストンしてきます。
この時間になると雲も多くなってガスってきましたが、稜線を彩る紅葉が凄まじく綺麗でした。
そして思った。六日町駅からタクシー使って本当に良かったなと。1時間遅れのバスでは核心部あたりでガスっていただろうし、課金した甲斐があったと心から思えました。
稜線をしばし歩いて入道岳に到着。
頭上だけは晴れて陽が届いていましたが、周囲は残念ながらガスってしまい展望はなし。
晴れていればこの入道岳からは中ノ岳へと続く鋭利な尾根道が見えるので、ぜひそれを楽しみに登ってみてください。
こちらは12年前の入道岳からの中ノ岳の展望。
この区間も破線ルート扱いの難所と呼ばれるところ。ガクンと下っての登り返し、これはキツそうだわ……、と12年前の自身のブログを読み返して思いました。
入道岳から来た道を戻って迂回路へ。
帰りがけに見えた八ッ峰の岩稜帯と紅葉が目に焼き付きました。
帰りは迂回路を行くものの、この迂回コースが一筋縄では行かないのが八海山。
普通にハシゴや鎖場などが設置されてアップダウンも多く、他の山では難ルート扱いになるくらいのレベルで体力削られます。
紅葉が綺麗なのが唯一の救い。
狭いトラバース路もあって、片側に鎖の手すりが設置されているあたりは北アルプスの下ノ廊下を彷彿とさせる道。
迂回路という言葉に惑わされないでください。このルートも十分危険に満ち溢れております。
迂回ルートとは名ばかりのデンジャラスゾーンを抜けて、千本檜小屋まで戻ってきました。
登りの時点ではたくさんの人が休憩していた山小屋も、帰りは誰もいなくてひっそりとしていました。
その後は来た道を戻ってロープウェイを目指します。
最後、ロープウェイ山頂駅近くに観光客向けの展望台があったので立ち寄ってみました。
展望台からの眺め。
写真だとわかりづらいですが、奥に見えている陸地の先は日本海。
この時間になると雲も取れてくれて気持ちの良い景色が広がっていました。
こうして14時30分にロープウェイ山頂駅に無事に帰還。お疲れ様でした。
来た時にも思いましたが、遺跡のような無骨な建造物が男心をくすぐるぜ。
14時40分のロープウェイで下山しましたが、驚いたのがこの時間になっても観光客が多く登りに来ていたところ。
そういえば、12年前のブログを見返しても下山時に観光客の列が出来てたと言っているので、団体ツアーは夕方あたりに八海山ロープウェイの行程が組まれているのかもしれません。
行きはタクシーでしたが、帰りは路線バスを利用。最終便1つ前の15時25分発のバスに間に合いました。
乗客が自分一人だけだったので出発の時間まで運転手さんとお話しましたが、年々八海山の紅葉客も減ってきているとのこと。また自分が行きだけタクシー使ったのを話したら、昔は8時半の始発便があったんですけどね~と言って、「そうなんですよ、12年前は行きもバスを使ったんです」と思い出話。
こういう地元の方との何気ない交流も公共交通利用の醍醐味かもしれないと思えた1日でした。
八海山のバリエーションルート、八ツ峰縦走コース。
スリル満点の岩場、鎖場の連続は自分にとっては難易度高めでしたが、それなりに楽しく歩けたし、何よりも雲海と紅葉が素晴らしい景色でした。
岩峰と紅葉の相性はやっぱり抜群ですね。
秋の絶景に出会えた登山でした。
【日程】
2025年10月17日
【コースタイム】
9:10 ロープウェイ山頂駅
9:50 女人堂
10:30 薬師岳
10:40 千本檜小屋
10:50 地蔵岳
11:40 大日岳
12:10 入道岳
13:10 千本檜小屋
14:30 ロープウェイ山頂駅
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