登山ハイシーズンとも言える7月から8月の夏。
3000m級の高山でも雪解けが進み、高山植物が花咲かせる中でテント泊や小屋泊でアルプス縦走なんかに興じたくなる季節です。
夏山登山は陽も長くなる半面、午後になると雲が湧き出て思わぬ荒天に見舞われることもあります。雲の湧き出るスピードが速いのも夏ならではですが、それがまた予期せぬ絶景を生み出してくれたりもします。
夏山登山において雲の存在は切っても切れない関係。
どんなに天気予報が良かろうが、気温が上昇する午後は大抵雲の1つや2つ沸き上がって来るもの。
時としてそれは雷や大雨をもたらす積乱雲に発達することもあるので、無視できるものではありませんが、雲のおかげで見られる景色というのも確かにあります。
夏山登山を彩る陰の演出家、雲もまた欠かせない存在。
夏の北アルプス・双六岳からの景色。
時間は14時を回った頃。双六小屋にテントを張り終えて、双六岳山頂までを往復した帰り道です。
夏山らしく、午後になって雲が沸き上がってきたところですが、見上げればまだ青空。白と青のコントラストが美しかったです。
そしてその数分後、目の前に現れたのが槍ヶ岳の剣先。
ちょうどその部分だけがぽっかりと雲の合間から見えて、槍ヶ岳がこの上なく神々しく見えました。
RPGで言えば大ボスが待ち構えるラストダンジョンのような、近寄りがたくも凛々しい姿にただただ感動。
雲の移り変わりが早いのも夏山の魅力の1つで、ガスったかと思えば数分後にはこうした絶景が見れるんだから、夏の登山は面白いです。
こちらは北アルプス・南岳から眺めた穂高連峰。
南岳小屋に到着した時にはガスっていて、あたり一面真っ白……。すっかり諦めてテントの中で寝ていたのですが、夕方急に明るくなって外に出てみたらこの展望が待っていました。
雲のベールを纏った岩の殿堂・穂高岳が最高にカッコ良く見えた瞬間!岩山は歩くのは苦手ですが、見るのは大好きです。
雲が流れる様子をただただボーッと見てました。合間にはブロッケン現象なんかも見れて感動のひと時でした。
南岳小屋のテント場はロケーションも最高なので強くお勧めしたいところです。
周囲が開けているので、テントにいながらこのような夕日を眺めることができます。
雲海の彼方に沈む太陽もこの上なく美しい光景でした。
湯ノ丸山山頂で迎えたご来光。そこで見た雲海と浅間山も忘れられない景色です。
雲海というのはなかなか狙って見れるものでもなく、しかも標高次第では自分自身が雲に包まれて辺り一面真っ白というリスクも抱えますが、この時は運よく雲の上に出れました。
山頂に着いた時点では多少ガスっていたのですが、そこからの雲の流れが劇的で、ご来光とともに浅間山が姿を現した時は本当に登りに来て良かったと思えました。
深夜から登って早朝の4時台に山頂でご来光を迎える。
一緒に登った仲間たち以外誰もいない静かな空間の中、目の前をうごめく様に波打つ雲海がまさに生き物のよう。すごい迫力でした。
普段ならまだベッドの中で寝ている時間帯。早起きは苦手なクチですが、眠い目をこすりながら登って見れた景色だからこそ、感動もひときわ大きいものがあります。
非日常的な感覚に浸れるのも、登山の魅力の1つですね。
夏の尾瀬。緑の湿原、そこに敷かれた木道と綺麗な池。
多くの人がイメージする尾瀬にピッタリの景色が見れた日でしたが、実際のところはやや足早に歩みを進めていました。
午後から荒れる予報が出ていた上に、こういうだだっ広い湿原というのは逃げ場も少ないので雷なんかに見舞われたら大変。
幸い、登山口の鳩待峠に着いた瞬間に雨が降り出したのでギリギリセーフ。こうして「雲が綺麗だったなぁ」とポジティブに紹介できる登山となりましたが、夕立にはくれぐれもご注意ください。
雨で濡れた木道とかも滑りやすくて結構危険です。
夏の八ヶ岳でも雲との戯れは忘れられません。特に昨年の権現岳から下山する時に見た、差し迫ってくる雲の圧力というのはかなりの迫力がありました。
稜線の東側から覆うように湧き出るガスの群れ。数分後には権現岳の穂先が見えなくなりましたが、その瞬間というのはまた雲の演出も相まって印象に残る景色でした。
ちなみにこの段階で時刻はまだ9時前。早朝から登っていたのが功を奏した形でしたが、まさか9時ごろから天気が崩れるとは思っても見ませんでした。
夏山は天気の急変に要注意ですね。
北アルプス・薬師岳。登っている間はガスったり晴れたりの微妙な天気でしたが、山頂に着いてみたら見事に晴れてくれて大喜びしたのを覚えています。
悪天からの起死回生の青空こそ、嬉しいものはないですね。
真っ白な山肌の薬師岳がこの上なく美しく見えました。
眼下にはまだ雲が居座っていましたが、それもまた迫力ある景色を演出してくれていました。
この時は太郎平小屋に宿泊していたのですが、素泊まりで泊まったが故に夕食の時刻とかも気にせず、日没後まで自由に歩き回れたのがよかったです。そのおかげで出会えた景色でもありますし。
夏山はなかなか1日中晴れが続くというのは難しいですが、こういう景色が見れる可能性を考えたら、多少天気が悪くても登ってみようかなと思えなくもないですね。
標高を下げると当然、雲の中にダイブすることになるわけですが、霧に包まれた森の風景というのもなかなか趣深いものがあります。
特に夕日が差し込む時間帯だったので、もののけの森というかなんというか、すごく神秘的な雰囲気を感じました。
翌日の黒部五郎岳も無事に晴れてくれて、1泊2日の充実した北アルプス登山でしたとさ。
他にも思い返せば色々あったと思います。
もともと快晴予報が出ている中での登山というのは、まぁ晴れて当たり前なところがありますが、「晴れるか微妙」という予報で登りに行った山こそ、こういった起死回生の天気に出会すと嬉しいものです。
逆に天気が悪くなると思ってやめた日が、実は予報に反して晴れました、というときこそ悔しいものもありません。
事前の天気予報との睨めっこも大変、それが夏山登山。
早いもので今シーズンの夏山も終わりに差し掛かっていますが、チャンスがあればこういう雲と緑の景色を見に行きたいです。
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