電車、バス、タクシーといった公共交通利用でこそ歩ける登山コースというのも探せば結構あるもので、今回はそういったお話。
公共交通最大の利点とも言えるのが、登山口と下山口を全く別の場所に設定できること。車の回収というのを考えなくて良いのがマイカーにはないアドバンテージであり、その効力を最大限に発揮するのがアルプスなどの長距離縦走にあります。
過去に自分が歩いた、そういった縦走コースを数件ご紹介。公共交通利用の登山者にこそおすすめしたいです。
少し前にも公共交通について語った回がありましたが、こういった雑感的な記事の方が割と楽しく書けている部分もあるので、今後増やしていこうかなと思いつつ、、、
今回のお話は、またまた公共交通利用の登山について。
電車、バスといった公共交通利用のメリット・デメリットは色々ありますが、その最大の利点ともいえるのが、登山口と下山口を全く別の場所に設定できること。
マイカーだと当然ながら、車の回収があるので車を置いた場所に戻ってこないといけませんが、公共交通利用ならそんなものは関係なしに、好きなところに下りて好きな手段で帰ることができます。もちろん、そこに公共路線があることが前提という縛りがありますが、今回は過去に自分が歩いたコースの中で、公共交通利用だからこそ実現できたと思える登山記録を紹介しておきます。
少しでも参考になれば幸いです。
【近畿】大杉谷~大台ヶ原~大峰山(八経ヶ岳)
2016/4/29-5/1 大杉渓谷~大台ヶ原~大峰山 2泊3日縦走登山
まず、個人的に満を持してお勧めしたいのがこのコース。大杉谷~大台ヶ原~大峰山の縦走。
細かいことを言えば大台ヶ原から大峰山まではバスを乗り継いでいるので、全部を歩き通したわけではないですが、このルートを発見したのは地図を眺めていた時のこと。
この当時はやはり遠征するなら日本百名山に登りたいという思いがあって、大台ヶ原と大峰山(八経ヶ岳)は何としてもセットで踏破したいと思ってました。
ただ、いかんせんこの2座に関しては結構距離があるなと思っていたのですが、よくよくバスの路線を見てみると、大台ヶ原からの帰りのバスに、大普賢岳登山口近くに立ち寄る瞬間があるではないかっ!そして大普賢岳から八経ヶ岳まで1日で縦走できるではないかっ!
ってことで、組んだルートがこれ。
詳細は当時の記事を見てもらうとして、正直なところ、この登山に関しては登頂できたことよりも、このルートを自力で発見して完遂できたことにすごい満足感がありました。
特に最初の大杉谷を絡めて歩けたのは本当に良かったです。神秘的な滝、迫力ある渓流の岩壁など秘境感満載で、大台ヶ原、大峰山の日本百名山登山よりも大杉谷の渓谷トレッキングの方が断然楽しかったです。
自分はゴールデンウイーク期間の2泊3日で歩いたわけですが、行程としてはややキツイかもしれません。特に後半の大峰山。
熊野古道の山岳道を歩いて行きつく八経ヶ岳の山頂。地味な登山道ながらもアップダウンあり、鎖場やハシゴありとバリエーションに富んで、かなり体力を削られました。
無事に登頂できたのは良かったですが、やはりこのコースを公共交通を駆使して完遂できたこと。これに尽きます。
この記事を参考にして同じルートを歩いてくれた方もいらっしゃったようで、記録としても残しておいてよかったと思えた山行でした。
ちなみに2日とも山小屋に泊まったのですが、どちらもお風呂が付いているというのもポイント高かったです。
【東北】飯豊連峰
2014/7/20-22【東北】飯豊連峰 2泊3日テント泊縦走登山
山形、新潟、福島の三県にまたがる飯豊山。この時点ですでになかなかの山域というのを物語っているわけですが、日本百名山の中でもその難易度はかなり高いものがあります。
東北の日本百名山の中で一番難易度が高い山を上げるとしたら、この飯豊山と答える人も多いんではなかろうか。
山深いので、そもそも登山口にたどり着くまでがまず大変です。
山域が広い分、ルートの組み方は色々とあるわけですが、公共交通利用で行く場合、山形側から入山して稜線上で新潟内に侵入、最後に福島側に下山するという大胆なルートが組めます。
自分の場合は飯豊山荘から入山して、弥平四朗へ下山するコースで歩きました。距離としてはかなりの大移動です。
もちろん、マイカーでも馬蹄形のように組めるルートはあるので公共交通必須という山ではないですが、電車・バスで向かうと夜行バス以外にもローカル線や地元のデマンドバスなどを駆使することになるので、旅感を最大限に演出してくれます。
【東北】朝日連峰
2017/10/8-9 【東北】朝日連峰(以東岳~大朝日岳)1泊2日縦走登山
先の飯豊連峰と並んで語られることが多いのが朝日連峰。この山もアクセス難な山域の1つですね。
朝日連峰を歩く場合、最高峰の大朝日岳を踏むのはもちろん、隣の日本二百名山に選定されている以東岳も合わせて登りたいところ。
そんな要求を叶えてくれるのが公共交通利用です。
自分の場合は以東岳から南下するルート取りをしたので、スタートとなったのは泡滝ダム登山口。夏場であればJR鶴岡駅からバスが出ているのですが、秋の紅葉時期はバスがなかったので、仕方なくタクシーを利用しました。
公共交通利用におけるタクシーというのは果たしてどうなのかという議論はここでは置いておいて、登山口についてしまえばあとはひたすら歩くだけ。はるか南の朝日鉱泉目指して、1泊2日のやや強行スケジュールで歩き通しました。
紅葉の朝日連峰、すごいっていう噂は聞いていましたが、本当に凄かったです。こんな派手に色づく稜線、初めて見ました。
天気にも恵まれて紅葉風景を存分に楽しめた縦走でした。
下山口となる朝日鉱泉からのバスについては期間限定なのが要注意。夏シーズンでいったん終わり、秋の紅葉シーズンは10月連休だけ一時的に運行再開してくれます。自分たちはこの10月の連休を狙って行ったわけです。
ただ、避難小屋はどこも超満員だし、帰りのバスも予約制なので、計画練るならお早めに。
そうそう、この時泊まった避難小屋で、「世界の果てまでイッテQ」の登山部顧問でお馴染みの「天国じじい」、その上司にあたる有名な方とお会いできたのは良い思い出。
夜に色々とお話させてもらって、その時は「詳細は語れないけど次の収録に向けて色々と進んでいる」っていう話を聞きました。それが結局、南極大陸のヴィンソン・マシフだというのを知ったのは、半年後に放送された番組を見てのことでした。
【東北】蔵王連峰
2018/6/2 【東北】蔵王連峰(不忘山~刈田岳~熊野岳)日帰り縦走登山
東北アルプス、東北に連なる山脈を語る上であまり名前が出てこないのに納得がいかないのがこの蔵王連峰。飯豊連峰、朝日連峰と同じく、蔵王も立派な連峰でございます。
その蔵王連峰の縦走で特にお勧めしたいのが、南の不忘山から入って稜線をひたすら北上。刈田岳、熊野岳という蔵王山の主峰を踏み、蔵王温泉へと抜けるという蔵王総なめの縦走路。
宮城側から入って真逆の山形側へ抜けるので、マイカーでは成しえないコース取りです。
特に6月の花の盛りの時期がお勧めで、不忘山にはハクサンイチゲの大群生が見れる絶好のお花畑ロードが広がっています。
不忘山を単品で登るならもちろんマイカーでも可能ですが、蔵王山の熊野岳や地蔵岳をセットで、しかも1日で全部回り切ろうとするならやはり公共交通アクセスしかないと思います。
公共交通のメリットを最大限に生かしたルート。車持っていないハイカーにはぜひともお勧めしたいです。
このルートのもう1つ良いところは、蔵王温泉に下りるためのロープウェイ近くにあるドッコ沼。ここに立ち寄れる点です。
おそらくこの縦走をしなければ一生来ることがなかったであろう沼ですが、新緑と合わせてエメラルドグリーンの池が神秘的でとても印象に残った場所でした。
時間に余裕があれば、ここも合わせてみてほしいところです。
1つ注意点としては、日帰りで歩くにしては行程がやや長いのと、6月の初夏のシーズンは下山時に利用するロープウェイの運行状況。蔵王温泉周辺にはロープウェイがいくつかありますが、運行しているものといないものがあるので、事前にチェックしておく必要があります。
【屋久島】宮之浦岳~白谷雲水峡
幅広く捉えれば屋久島も公共交通利用での登山に適しています。
そもそも現地までは公共交通に頼らざるを得ないのが島旅。屋久島に上陸後はレンタカーを借りれば色々好き勝手巡れて便利なのですが、屋久島のメインどころを縦走するのであれば、公共交通に頼るのがベスト。
宮之浦岳~永田岳~縄文杉~ウィルソン株~トロッコ道~白谷雲水峡という屋久島の大動脈を(早めに歩けば)1泊2日で歩き通すことができます。
縦走路途中には避難小屋しかないので、寝袋や食料などはすべて持参する必要がありますが、このメインどころの観光スポットを2日間で巡れるのはかなり大きいです。
屋久島は主要観光地に関してはバスの路線網も整っているので、レンタカー頼らずとも大いに遊ぶことが可能です。
屋久島へは過去に2回訪れているのですが、奇岩が点在する宮之浦岳の稜線は不思議感満載で面白いですよ。山頂からは海の大展望も約束されています。
2年前の一人旅で印象に残っているのが、入山前日にまさかの降雪で雪化粧をまとった中で宮之浦岳~永田岳を縦走したこと。
これはこれで貴重な体験で、なかなか見れない景色に出会えたという意味でも良かったのですが、靴やザックはびしょびしょになりました。3月の屋久島で軽アイゼンを履くことになるとは夢にも思わなかったです。
【北陸】白山、荒島岳
2015/7/25-27【北陸】白山~荒島岳 2泊3日テント泊登山
北陸を代表する白山と荒島岳。この2つの日本百名山も公共交通で回ることは可能です。
白山についてはJR金沢駅からバスも出ているので難なく登れるのですが、問題は荒島岳。JR勝原駅から直接登れる山ではあるのですが、この勝原駅まで行くのがやや難で、電車でのアクセスだと遅い時刻での到着になってしまいます。
どうしたもんかと地図を眺めていたら、白山を別山~三ノ峰まで縦走して上小池登山口まで下りてしまえば、勝原駅まで結構近づけることを発見。
こういったことを自力で見つけた時の喜びっていうのが、またたまらんのよ。
タクシー利用にはなりますが、白山を1泊2日で縦走して下山口から荒島岳登山口までがそう遠くなく、接続させることが可能です。勝原駅近くには無料キャンプ場があるので、テント持って行けばそこに宿泊できます。
このルートの醍醐味は白山を三ノ峰まで縦走できるのと、荒島岳下山後に九頭竜線というローカル列車に乗れること。この列車からの眺めがまた奥ゆかしくて「旅しているな~」という気持ちに強くさせてくれます。
ピークを踏むだけならマイカーでももちろん登れるこの2つの山ですが、公共交通利用での登山も悪くないですよ。白山~別山~三ノ峰の縦走路も高山植物豊富でかなり良かったです。
【北アルプス】裏銀座~雲ノ平
アルプス界隈については公共交通網が発達しているので、たとえマイカーであっても下山後に電車やバス移動して登山口に戻ることは可能だと思います。
そんな中で、自分が過去に歩いた北アルプス縦走で長野側から3泊4日かけて富山側に抜けたのがこの縦走。
裏銀座と雲ノ平、それを取り巻く名峰群を余すことなく巡れるルートです。烏帽子岳、野口五郎岳、水晶岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、黒部五郎岳、薬師岳、4日の間で日本百名山4つ、日本二百名山1つ、日本三百名山2つを一気に回れました。
このルートに限らず、北アルプスは縦走の組み方が豊富で、なおかつ登山口までの公共交通網も整っているので、色々な選択肢があります。
特に北アルプスに登りつめていくと、岐阜や長野側から入って富山側に抜けたい、あるいはその逆というようなダイナミックな縦走に憧れる人も多いのではなかろうか。
自分は直近では立山から入って薬師岳へと縦走するコースを歩いてみたいと思っております。あとは南アルプス。塩見以南を一気に縦走してみたいものです。
事前のバスの予約、乗り継ぎ、時間調整など色々な制約はありますが、ここで挙げたものはおそらく公共交通という手段だからこそ歩けたコース取りだと思います。
どれも満を持してお勧めしたいものなので、良ければ参考にしてください。
コメント
あちらにご返信ありがとうございます。あちら話題ですが……
みやっちさんや私は全く心配ないと思います。インフルエンザのほうが感染しやすく致死率も高いと言われていますが、最後にインフルエンザにかかったのはいつ? 私は少なくとも平成以降はないです。
私は明日、静岡の高尾山を歩いてきます。
これもgoodな特別編! でもここにコメントできるのは、みやっちさん以外には私しかいない?(笑)
何でそんなに車で山に行きたいんでしょうね? 普通の旅行とは違って、山中は荷物を持たなきゃならないのに。
ご紹介のうちでは、飯豊、朝日、蔵王、雲ノ平が印象的。どれも忘れられない山旅です。みやっちさんに比べると牛歩ですが。
ねもさん、こんばんは。
こちらへのコメントもありがとうございます。公共交通利用が多いので、この記事は私自身がずっと書きたかったものでもあります。
自分の場合、登山後の温泉用の着替え一式や靴も持ち運ぶので、マイカーに比べると必然的に荷物が重くなりますが、その分鍛えられたっていうのもあるかもしれませんね…(笑)
下山後のバスの時間などの制約もありますが、反面その制約があることで日没ぎりぎりで降りてくるなんてこともないですし、無理のない行程が組めるのでいいこともあります。
まだいくつか電車・バスを駆使して歩きたいルートは残っているので、この記事のVer.2もいつか書ける日が来るといいです!
しつこくてゴメンなさい。
薬師岳→立山を昨夏、歩きました。楽しかった(^_^) お時間あれば、眺めてください。https://4travel.jp/travelogue/11535275
こちらありがとうございます。そういえば4トラベルの方でもコメント頂いたことありましたね。
今度ゆっくり見させてもらいます。
飯豊縦走に憧れて山ブログ拝見している時にミヤッチさんのブログを知りました。写真が綺麗で花や風景だけでなくトレイルな様子やアクセスが懇切丁寧に紹介されていて感激しました。
計画作りにとても参考になります。CTはダメですけど
年寄りですので無理せず2泊を3泊に置き換えて、雪渓上りも勿論やめて、ゆっくりと安全にが大事です。
問題は仲間です。
30年来の友達は膝を手術してから大きな山は敬遠しますし、
百名山派の友達はツァーで済んでいるので、今更そんな大変なルート!と言う感じです。
東北の山を一人で歩くのも勇気が要るし、しかも避難小屋3泊。
悩みは尽きません。
でも、諦めず来年に向けて身体の調整をしていくつもりです。
山は逃げないけど遠くなりますね。
私も基本的に山は「あちらから入ってこちらに抜ける派」です(日帰りでも)ので公共交通機関を使っての縦走も楽しく読ませて頂きました。
ミヤッチさんと一緒に山を駆けているような気になって時間を忘れます。
今度はどこの山をどのコースで(これある意味一番大事ですよね)歩かれるのか楽しみに待っています。
oyaguriさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
飯豊連峰は今でも思い出に残っている縦走の1つです。実は先月に飯豊連峰に再び行く予定だったのですが、天気が悪く断念しました。
当時に比べると私も体力が多少落ちていますが、今度は朳差岳まで縦走したいと思っております。
公共交通利用の良いところは、まさに飯豊山のように県をまたいで縦走できるところにありますよね。車の回収を考えずに、好きなところに下りれます。
私もなかなか仲間とのタイミングが合わず、最近はソロが多いです。だんだんと登りたい山も違ってくるんですよね。一人は自由度がありますが反面リスクもあるので、自分の体力に見合ったルートを安全第一で登りたいと思っております。
oyaguriさんも、どうか充実した山歩きができますように。