9月の3連休に北アルプスの爺ヶ岳~鹿島槍ヶ岳を1泊2日のテント泊で登ってきました。
1日目は扇沢をスタートして、爺ヶ岳に登って冷池山荘まで。稜線に出てからのアルプスの山並みと果てしなく広がる雲海が絶景でした。
明け方は雲が多めでしたが、夕方はすっきりと晴れてくれて、テント場からの夕日と夕焼け、立山~剱岳のシルエットが素晴らしかったです。ちょうど「中秋の名月」の日で、夜空に輝く美しい満月も印象的でした。
9月最初の登山は北アルプスの爺ヶ岳と鹿島槍ヶ岳。
爺ヶ岳は4年前の残雪期にも登りに行きましたが、鹿島槍ヶ岳については2012年に初登頂して以来、7年ぶり。
しかも、その時は雨も降る悪天候の中で登頂を果たし、そのまま八峰キレットに突っ込むというわけがわからないことをやっていました。。
当然山頂ではガスっていて展望も全く見れなかったので、その時見れなかった景色を回収するべく、久しぶりに登ってきました。
2019年9月13~14日 北アルプス・爺ヶ岳~鹿島槍ヶ岳 テント泊登山
例によって新宿からの夜行バスを利用して登山口となる扇沢へ移動。
日程を見てもらうとわかりますが、9月13日は連休前の金曜日。仕事もひと段落して落ち着いたので、少しばかり遅い夏休みをもらいました。
朝の5時30分に扇沢に到着。
扇沢と言えば、黒部ダム・立山室堂への入り口として有名。実際、この日の夜行バスは満員御礼で全員この扇沢で降りたのですが、ほとんどの人が立山目当てだったようです。7時30分のトロリーバス運行開始まで、皆さんベンチで時間つぶしてました。
まだ2時間前だったのでチケットの行列はできていないですが、無料駐車場はすでに一部が満車状態。金曜日でこれだから快晴予報の出た3連休は恐ろしい……
自分は鹿島槍ヶ岳がメインなので、扇沢駅ではトイレと水を補給して登山口へと歩き出す。
少しばかり来た道を戻ります。トンネルが何となく不思議空間。
こちらが爺ヶ岳登山口。扇沢から徒歩10分程度で着きます。
この登山口のわきにも駐車場があるのですが、この時点ですでに満車に近い状態でした。
奥の建物が登山相談所になっていて、シーズン中は人がいるのでそこで登山届を出すように言われます。係の人がいない場合はポストが脇にあるのでそこに投函すればOK。
6時10分、登山開始。
登るのは爺ヶ岳登山の一般ルートである柏原新道。この道を歩くのも久しぶりです。
しばらくは樹林帯の単調な登山道が続きます。
朝靄がかかってもののけの森の雰囲気ある登山道。日差しがない分、登るには快適な環境。
1日目は曇りの予報だったので天気はあまり期待していなかったのですが、後々良い方向に裏切られることになりました。
9月ともなれば高山植物もほとんど終わっていますが、登山道わきにはまだちらほら花が残っていました。
紅葉前の9月中旬。7月あたりに比べると朝晩は冷え込むこともありますが、まだ日中は街中でも30℃以上の予報が出ているので、自分の中では今年最後の夏山という気持ちで歩いてます。
小一時間ほど登って到着するのが八ツ見ベンチ。ベンチという名の木の板が設置された休憩ポイントです。
この柏原新道は心臓破りの急登が続くわけではないですが、基本的に登りばかりで休憩できるポイントも限られているので、ここを最初のターゲットに登ってくるのが良いかもしれません。
八ツ見ベンチを過ぎると時折展望が開ける場所があります。
目の前に見えている山が針ノ木岳。自分の中ではとある事情によってトラウマのある山ですが、良い山ですよ。隣の蓮華岳と合わせてぜひ登ってみてください。
眼下に見える建物がスタート地点の扇沢。だいぶ登ってきた感じがしますが、まだ序盤です。
この後も樹林帯の中をひたすら登っていきます。
柏原新道はたまに平坦な箇所も出てきてくれるのがありがたい。鹿島槍ヶ岳はやや強行すれば日帰りでも歩けなくはないコースタイムですが、そこを今回はあえてのテント泊。登山自体が1ヶ月というのもあるので「ゆるふわ」をテーマに登っております。
展望が開けたところからはこんな感じの迫力ある山岳風景。
目の前にあるのは針ノ木岳から爺ヶ岳へと続く稜線の岩壁。自分はまだ歩いたことがない区間ですが、スバリ岳とか赤沢岳とか色々なピークを踏んでいくルートです。
水平道、その名の通り登り坂から一時解放されて平坦な道が歩ける区間です。
こういった緩急があるので、柏原新道は割と歩きやすいというのが自分の中の印象。幸い日差しもなくて体感温度もちょうどいいです。
ただし、道中に水場が一切ないので、そこだけご注意を。山小屋で手に入りますが、宿泊者以外は有料になります。豪雪地帯ですが、水源の沢が稜線から離れているので水は貴重。
登るにつれて徐々に視界が開けてくる。
途中、霧となって森を覆っていた雲も抜けて、綺麗な雲海になっていました。
最悪、初日はガスっても仕方ないと思っていただけに、視界良好なこの状況はうれしかったです。
登山道途中にあったのがアザミ沢。
名前の通りアザミがたくさん咲いている場所です。この一ヶ所だけが不思議なくらいに群生になっているので、その場に行けばすぐにわかります。
柏原新道は危険個所はほとんどないですが、一部崩落ポイントがあるので、こういうところはさっさと通過しましょう。
連休前の金曜日のはずですが、すでに結構な人が登っていて、何人もの人を追い抜いたり追い抜かされたり。
だいぶ辛くなってきたところで最後に待ち構えているのが、この鉄砲坂。
名前からして危険な香りがしますが、この坂に入れば稜線が近いという目印です。森林限界もすぐそこなので頑張って登りましょう。
こうして9時ちょうどに種池山荘に到着。
稜線との合流地点に立てられた山小屋で、そこまで広くはないですがテント場もあります。
種池山荘からの展望。登ってきた方面を振り返ってみたら、見事な雲海が広がっていました。
雲海が敷かれていながらも頭上にも分厚い雲。ちょうど雲の層にサンドイッチされた不思議な感じ。
快晴のほうが嬉しいに決まっていますが、こういう景色は狙って見れるものでもないので、これはこれで印象的な風景。
こちらは針ノ木岳方面の稜線。奥には立山連峰も姿を見せ始めました。
ここから先、この西側の展望が凄いことになってくるので大いに期待すべし!
山荘で軽く小休憩。夏は高山植物のお花畑が広がっていたのであろう場所には、チングルマの穂の群生だけが残っていました。これはこれで綺麗ですが、少し物寂しい感じも。
自分は夏山のシーズン終わりが一番しんみりします。冬の雪山も好きですが、私は断然夏派。山でも街でも寒い冬より暑い夏のほうが好きです。
夏山が終わると思うと寂しいぜ……
種池山荘からはいよいよ至福の稜線ハイクへ。
まずは爺ヶ岳へと目指しますが、その山頂はもう目の前に迫っています。
こちらが日本三百名山の爺ヶ岳。
爺ヶ岳は細かく南峰、中峰、北峰とあって、このうち登れるのが南峰と中峰。最高地点の2669mあるのは中峰でこれが本峰とされています。
目の前に見える三角形の山は南峰。残雪期に登頂したのがあのピークです。
ちなみに爺ヶ岳は熊の目撃情報が多いことでも有名。
山小屋には注意を促す張り紙がしてあったし、登山道には確かに熊が好みそうなベリーの果実がたくさん実っていました。
熊鈴は序盤の樹林帯でこそしていましたが、あまりにも人が多かったので外しました。混雑する山は嫌いですが、熊との遭遇の心配が減るのはメリットですね。
爺ヶ岳まで続く稜線登山道。
ここに来て、一気にアルプスっぽい雰囲気になりました。そして傍らには早くも色づく紅葉。
その紅葉越しに見えるのが鹿島槍ヶ岳。
北峰と南峰から成る見事な双耳峰。今回の山行の目的地があそこ。
久しぶりの登頂なだけあって気分が昂る。
登ってきた道を振り返ってみてまた絶景。
優雅な稜線風景、オレンジ色の屋根が種池山荘で、その奥に見える山々が立山連峰と剱岳。登山界では「タテツル」と呼ばれ親しむ国内屈指の人気山岳エリアです。
自分も大好きな場所なのですが、この前週にはあのタテツルでテントの盗難事件があったり、この前日に剱岳に登っていた女の子が亡くなったりと、少し残念なニュースが続いている山域。 盗難はもっての外なので、そんな野郎は早く捕まればいいのですが、若いハイカーが亡くなるのは理由はどうあれ辛いですな……
こちらは北アルプス南部方面の展望。
実際に肉眼で見れば一目瞭然ですが、はるか奥には槍ヶ岳の尖がりもしっかりと見ることができます。
南峰山頂が近づいてくる。
種池山荘からずっと見えているピークですが、あの頂が地味に遠いのが応える。道も一見すると急登に見えないのが余計にね。
爺ヶ岳の各山頂は登らずに巻けるルートが用意されているので、登頂が面倒であれば巻いて進みましょう。
かくいう私も南峰は盛大にスルーして、中峰へ向かうことにしました。
2日目のほうが良い天気予報が出ていたので、帰りに立ち寄るという名目でね。
南峰を過ぎると、次は中峰が目の前に現れるわけですが、本峰なだけあってその風格はなかなかのものがあります。
中峰への稜線歩道。
この中峰ももちろん巻けますが、流石に初日に1つくらいはピークを踏んでおいたほうがいいだろうということで登ることにしました。
そんなわけで10時に爺ヶ岳・中峰に到着。爺ヶ岳の最高地点とされる標高2669mはこの中峰になります。
そしてこちらが爺ヶ岳山頂からの展望よ。
目の前に見えるのが爺ヶ岳の南峰、その奥には立山や薬師岳など北アルプスの面々。天気も回復してきて素晴らしい眺め!
南の方には槍ヶ岳もばっちり見える。
まだ南部は雲が多く、富山側から徐々に天気が良くなっている模様。予報では午後になるとにわか雨と言っていましたが、逆にこの後晴れてくる結果となりました。
立山と剱岳。位置的にも爺ヶ岳~鹿島槍ヶ岳がこの2つの山と横並びになるので、稜線に立てばすぐ目の前に見ることができます。
なかなか剱岳をすぐ近くで見れる場所というのもないので、爺ヶ岳に登ったらぜひ堪能すべし。
こちらは明日登る予定の鹿島槍ヶ岳。
今日泊まる冷池山荘が遠目に見えていて、さらにテント場の状況もここからよくわかります。
まだガラ空きなようでホッとした。
東側はひたすら雲海。
雲の層に挟まれた不思議空間。この雲海はこの後もずっと続きました。
爺ヶ岳からは富士山も見ることができます。
今日はもう冷池山荘に行くだけなので、山頂でしばらく時間つぶしてから向かうことに。爺ヶ岳から山荘までは1時間程度で着きます。
そして、山頂から下り始めて少し行ったところで、横のハイマツ帯から「ガサガサっ」と音が……
慌てて逃げ去るライチョウがおりました。2匹のつがいでまん丸していて可愛かったぞ。
翌日も爺ヶ岳手前あたりで子ども連れの雷鳥一家がいました。
爺ヶ岳から冷池山荘までは結構下る。
過去に一度歩いたことがある道でしたが、「こんなに下ったっけ?」っていうくらいに感じました。帰りのこの登り返しが地味につらかったです。
歩いてきた稜線。
爺ヶ岳を境にほぼ直角にカーブしているので、オレンジ屋根の種池山荘はずっと見えています。
爺ヶ岳~鹿島槍ヶ岳の区間は常に真横に立山~剱岳がいるので、もう展望は最高の道。
時間に追われないゆるふわハイク、気持ちにもゆとりがあって眺めを最大限に楽しめる。
眼下に流れる1本の沢(棒小屋沢)はやがて黒部峡谷へと続きます。
時期は9月でもう間もなく紅葉シーズンですが、山の上はまだ緑が綺麗な季節。
体感的にも日中は暑くて夏山と大して変わらない感じです。
鹿島槍ヶ岳を一番カッコよく見れるのがおそらくこのあたり。
ウサギの耳のようなかわいいシルエットですが、山肌は鋭く切り立った迫力。鹿島槍ヶ岳は南北でその姿がまるで違って、この南側から登る分には特に危険個所もなく山頂に立てます。対して北側には八峰キレットという日本三大キレットの1つが待ち構える難コース。7年前に一度歩きましたが、岩場と鎖場が連続するなかなか歩き応えのある道でした。
11時30分、冷池山荘に到着。普段のアルプス縦走であればまだ先へ進む時間帯ですが、今日のテーマはユルフワなのでここまで。
早めに受付をしてテント場を確保します。
小屋の周りは茂みに覆われているので剱岳方面は見えませんが、テラスからは東側の展望が望めます。
雲の上のベンチ、まさに文字通りの「雲海テラス」となっていました。
小屋で受付をしてテント場へ。ここのテント場は小屋から徒歩5分くらいのところにあります。
小屋の売店やトイレに行くにもいちいち行き来しないといけないのが面倒ですが、テント場のほうが眺めが良いです。途中崩落ポイントがあるので、真っ暗な中で歩く際はご注意を。
こちらが冷池山荘のテント場。まだ数張しか張られていませんでした。
ここは微妙な傾斜になっていて平坦で張れる場所はそう多くはないです。極力平らなポイントを狙いましょう。
割と平らだった端っこあたりにマイホーム設置完了。
テント代は1000円。水は有料かと思っていましたが、1Lサービス券がもらえたので買わずに済みました。
こちらがテント場からの展望。
西側も開けていて、立山~剱岳を一望できる絶品ロケーション!ここからの夕日の眺めが格別で、後ほど小屋宿泊者もこのテント場まで上がってきました。
まだ時間があるので、鹿島槍ヶ岳方面の道を散歩。
時間的には往復もできましたが、明日のお楽しみに取っておくことにしました。(ゆるふわがテーマなので)
ここから見ると3山あるように見えますが、奥2つが鹿島槍ヶ岳の北峰・南峰で一番手前が前衛の布引山。
ご来光を見るなら布引山でも十分綺麗な景色が見れます。
登山道わきのお花畑にはチングルマの穂の大群生。
夏山もいよいよ終わりか……
その後はテント場に戻って昼寝したり本読んだりしてまったり過ごす。
途中一時的にガスったりもしましたが、夕方頃になると再び晴れてきてくれました。
この日のテント場の混雑具合はこんなもん。
多くもなく少なくもなく、割と余裕もあってちょうどいいくらいのテント村が出来上がりました。1日前倒して入山した恩恵がこれよ。
テント場から眺める爺ヶ岳
北アルプス南部の山々もバッチリ見えてます。本当に良い位置に作られてるキャンプ場。
ちょこっと飛び出た槍の角先もこのテント場から見れるので探してみてください。
テント場から眺める鹿島槍ヶ岳
東側は相変わらずの雲海ワールド。
今日一日、ずっとこんな感じ。視界もクリアになってきて、新潟や群馬方面の山も良く見渡せました。
夕食を食べ終えた17時45分ごろ、ようやく夕日の時間帯。
マジックアワーの始まり。
テント場にいる人全員が同じ方向を眺める。
特に名前も知らない人たちと同じ景色を共有する、この瞬間が個人的には好きなんだ。うまく言えないけど、なんかいいよねこういうの。
爺ヶ岳や歩いてきた稜線も夕日に染まってきました。
風もなく穏やかな夕暮れ。
そして剱岳の肩に太陽が沈む。
事前の予報では夕日は諦めていたので、これを見れたのは本当に嬉しかったです。
ロケーションとしては素晴らしいものを持っているテント場でした。
日が沈んでからもしばらくはマジックアワー。
昼と夜が共存する絶妙なグラデーションの空。これも山泊で登らなければ見れない景色です。
剱岳のギザギザのシルエットが印象的でした。
そして反対側からは煌々と輝く満月がご登場。
ちょうどこの日(2019年9月13日)が「中秋の名月」で、1年のうちで最も月が美しく見れるとされる日。
満月なので星空はあまり見れなくなりますが、この日の月明かりは本当に強くて、夜中でも空が異様に明るかったです。ヘッドライトなしでも周りが良く見えました。
やがて西の空も夜に覆われて、1日がこうして終了。
普段のテント泊登山に比べると行動時間はやや短めでしたが、その分ゆっくりとテント生活が送れて、心身ともにリフレッシュできました。仕事で疲れ切った身体を労わる意味では、これが本来の山登りのスタイルなのかもしれない。
景色も色々なものが見れて楽しい1日でした。
そして、本当に凄かったのが2日目。7年ぶりの鹿島槍ヶ岳で見たご来光が神々しいまでの絶景でした。
【日程】
2019年9月13日
【コースタイム】
5:55 扇沢
6:10 爺ヶ岳登山口
9:00 種池山荘
10:00 爺ヶ岳・中峰
11:30 冷池山荘
コメント
はじめまして
同じ日に同じルートを歩きました
時間帯もほぼ同じで9時頃に種池山荘で
冷池山荘に11時頃につきました
小屋泊でしたがそのまま鹿島槍を登りました
テント場を通過したときに
ファイントラックのテント?!ツェルト?!も
拝見しました
なんか同じ時間を共有したのが
嬉しく思いコメントさせていただきました
今度はテント泊で登ってみたくなりました
お疲れ様でした
マッツンさん、初めまして。
コメントありがとうございます!
1日目に鹿島槍ヶ岳を登られたんですね。でしたら、確実に私のテントの真横を通っていますね。お互い最高の天気の中で登れてよかったですね。
冷池山荘のテント場は東西両方の展望が開けているので、朝日も夕日もしっかりと見れる絶好ロケーションです。ぜひ機会があればテント泊でも登ってみてください!