10月に北アルプスの前穂高岳~奥穂高岳を1泊2日の山小屋泊で縦走登山してきました。
1日目のルートは上高地から重太郎新道、吊り尾根を登って穂高岳山荘まで。
日本屈指ともいえる穂高連峰の岩稜帯。心底疲れましたが、稜線に出てからの風景がとにかく圧巻で、2日目の涸沢の紅葉と合わせて充実した秋の山歩きができました。
紀美子平で死にかけたのが一番の思い出。
おそらくこれが、2022年の最初で最後の3000m越え登山。
そもそも今年はアルプスに全然行かなかったですが、やっぱり1回くらいは高い山に登っておきたいということで行ってきました。
ジャンルは自分の苦手な部類である岩山。その岩山の最たる存在ともいえるのが北アルプス・穂高連峰。
今回は上高地を基点に、前穂高岳~奥穂高岳~涸沢岳を1泊2日で登ってきました。ついでに涸沢の紅葉も。
まずは1日目の記録。
2022年10月2日~3日 前穂高岳~奥穂高岳 山小屋泊登山
穂高連峰の前穂高岳と奥穂高岳。どちらも7年前に単発で登りに行ったことはありますが、それ以降はすっかりご無沙汰。
北アルプスの中でもだいぶ記憶が薄れつつある山です。
日程としては日曜~月曜の2日間。スタートが日曜日だったので、土曜日よりはマシかと思ってましたが沢渡駐車場は大盛況。
始発便のバスの列も凄いことになっていましたが、バス会社も書き入れ時とあって台数を大量投入してくれたのですぐに乗れました。
なんたって時期は10月初旬。涸沢の紅葉がピークとなる季節ですから。
5時半には上高地入り。そして、いつもの通り河童橋の写真を1枚。
ここからの景色を見て「あぁ、上高地に来たな」という感傷に浸れます。
今回は登りは岳沢登山口から重太郎新道で前穂高岳へと登るので、この河童橋を渡って対岸へ。
河童橋から眺める穂高連峰。
ちょうどジャンダルム辺りに朝日が差し込む時間帯で、頭頂部だけがモルゲンロート。
薄暗くてわかりにくいですが、前方奥の河原で新婚さんがフォトウェディングの撮影してました。
それを横目に岳沢登山口へと向かいます。
河童橋から20分ほどで岳沢登山口に到着。
上高地からいくつも巡らされた登山ルートの中でも、かなり早い段階で登り出しできるのがこのコースの良いところ。
6時過ぎ、上高地とはお別れして登山道へと入っていきます。
前を歩くのは……そうです、まさきです。
しばらくは単調な樹林帯が続きますが、傾斜もそれほどきつくはなく、登り初めにはちょうど良い道です。
こんな木製のナンバープレートが目印。
途中にある岳沢名所・風穴。
冷たい空気を感じるような、感じないような……。
ガレ場に出ると穂高の稜線が早くも見えてきます。
朝日を浴びて煌々と輝いておる。
これから向かう標高3000m超の世界、まだ見上げるほど遠い。
登り始めて1時間30分ほどで岳沢小屋に到着。
同タイミングで登っている人も多く、小屋の前のテラスでは多くの人が休憩してました。
ここから重太郎新道に入ると、穂高岳山荘に行くまでは水場が一切なくなるので、しっかりと補給しておきましょう。
何を隠そう、補給し忘れて軽い脱水症状に陥ったのがこの私です。
見上げる穂高岳。
ここから道は徐々に岩場へと入っていきます。
日が当たらないから、立ち止まると肌寒い……。軽く休んで先へ行きます。
岳沢小屋のテント場を抜けて登っていくと、まずはハシゴが登場。
高度を一気に上げてると思えば悪くない存在。
しばらく登ると絶好の展望台に出ます。
それがこちらのカモシカの立場。
断崖絶壁の岩場になっていて、正面には北アルプス屈指の難ルートとも言われている西穂高岳~ジャンダルム~奥穂高岳の稜線を一望!
北アルプスの3000m級を目の当たりにして気分が高まるところですが、ちょうどこの頃、ヘリが前方の稜線付近を旋回し始めて何やら不穏な雰囲気……。
滑落事故かな?とこの時は話してましたが、どうやらその通りでした。
ひとしきり展望を味わって先へと進む。
この辺りから鎖場も出てきて、徐々に岩山として穂高様が姿を現してきます。
ストックも邪魔になるシーンが増えてくるので仕舞っていいかも。
後ろを振り返ればこの絶景。
右手前が焼岳、左手前が霞沢岳、奥に乗鞍岳と御嶽山。屈指の名峰ぞろいです。
眼下にはスタート地点の上高地も見えていて、だいぶ登ってきたと実感する。
美しいカール。
下にちょこっと見えている赤い屋根が、先ほどの岳沢小屋です。
森林限界を完全に超えて、辺りは岩場の登山道へ。
ここら辺は道もよく整備されていて、危険個所も大してありません。
部分的に落石を誘発させないように階段も用意されています。
実際のところは結構な急斜面。登る分にはただの体力勝負ですが……
振り返って見るとなかなかの高度感。
すれ違うことも多くなってきたので、この辺りでヘルメット着用。
少しずつ近づいてくる岩の殿堂。
お城のようにどっしりとした佇まい。前穂高岳という名前から前衛的な立ち位置なのかもしれませんが、この山1つだけでも相当な迫力。
そう簡単には登らせてくれない。
見るからにギザギザした岩の稜線。
実際に歩かなくてもわかる、怖いやつや……。
見るだけで満足です。
天空の岩場とハシゴ。
すれ違い困難な箇所もあるので、そこら辺は他の登山者と話し合いながら。
ここ最近、すっかりリモートワークが定着したので仕事中はほとんど人としゃべらない。だからなのか、山に入るといつも以上に声を出してる気がする。(実際はあいさつ程度なんですが)
手足を使って登る岩場の連続。こういうところ場面を撮ると、どうしても前を行く登山者のお尻がどアップになってしまいますが、決してそこを狙っているわけではありません。
ここら辺も見た目ほどはキツくなくて、道順も親切なほどに記されているので難しくはないです。
こうして前穂高岳山頂直下の紀美子平に到着。
ここがまた絶好の展望台になっています。
前方にドッシリと構えているのが奥穂高岳。ジャンダルムの角も見えています。
高度もかなり上がってきたので、ずっと見上げていた稜線がだいぶ視線の高さまできました。
そして、この段階でもまだヘリが巡回している状況。肉眼でもジャンダルム付近で救助活動が行われているのがわかって、「あぁ、やっぱり事故なんだな」と認識しました。
ここから前穂高岳までは登り20分ほど。
ピストンで戻ってくることになるので、ほとんどの人はこの紀美子平にザックをデポって軽身で前穂高岳を目指します。
あとあとこの紀美子平で事故が起こるのですが、それを踏まえた感想としては「ザックを置くなら端っこの岩陰にしとけ」です。
久しぶりのガッツリ登山なもんで、だいぶ体力削られてきてますが、前穂高岳はやっぱり登っておきたかったので軽く休んで登頂開始。
ここもマーカーを頼りに登っていけば、そう迷うポイントもないかと思います。
振り返って見る奥穂高岳がとにかくカッコいい!
標高3190m。富士山、北岳に次ぐ国内第3位の標高の山。北アルプスの中ではトップに君臨するその威風は伊達じゃないぜ。
見上げるほどの急斜面を登っていく。
この道は7年前に一度歩いてはいましたが、正直あんまり記憶の無いところ。
体力がなくなったからなのか、ポンコツの身としてはずいぶん山頂までが長く感じました。
何度も振り返って小休止。
登るにつれて見える山も増えてきて、涸沢岳や北穂高岳も姿を現してくれました。
こうして11時45分、前穂高岳に到着。
標高は3090m。この山も立派な3000m超の山。日本の標高ランキングでもNo11にランクインされています。
展望は申し分なし!
ここまで登ってきて初めて目の当たりにするのが、表銀座方面。
常念岳や大天井岳、燕岳の稜線が綺麗に見えました。
西側には焼岳、乗鞍岳などの飛騨高山の名峰群。
合間に流れる梓川と上高地が、いかに山に抱かれた場所にあるのかがよくわかります。
北側には槍ヶ岳の角を筆頭に、北アルプス北部の山域も一望。
気持ちの良い秋晴れで、空気も澄んでいて本当に遠くまで見渡せました。
前穂高岳の山頂は結構広くて、休憩場所には困らないです。
ちょうどお昼時で登頂者も多く、思い思いに山の時間を過ごされていました。
八ヶ岳とか富士山とか、そこら辺も晴れていればバッチリ見えます。
やっぱり凄いのはこの景色。目の前にドンと構える奥穂高岳。
そう簡単には寄せ付けないゴツゴツした感じが、さすが日本のトップスリーという風格。
見ている分には壮観。これから登るとなると、大きく窪んでの登り返しになるので、先のことはあまり考えないようにします。
まだまだ時間もかかりそうなので、来た道を戻って奥穂高岳を目指す。
下山時も下山時で足元が不安定なので要注意。
頭の片隅に恐れていたことが、この後起こりました。
紀美子平まで戻ってきました。こんな感じでみんなザックをデポって登りに行ってます。
自分たちもザックを回収していざ奥穂高岳に向かおうかと思っていた矢先……
ゴロゴロゴロゴロ!と凄まじい音と同時に「逃げろーっ!」という叫び声が。
上を向いたら、登っている登山者が足を滑らせたのか、大規模な落石を発生させて、無数の岩がこの紀美子平に向かって落ちてきました。
ザックも手放して、その場にいた全員が一目散に前方(写真奥)の岩陰に避難。
幸い、誰もケガ人は出なかったので安堵しましたが、もしかしたらデポで放置されていた誰かのザックには掠っていたかも。
かなり危なかったです。
これまで見た中でも、最も間近で発生した落石の瞬間でした。
その後も細かい石が落ちてきたりもしたので、しばらく落ち着くのを待ってから先へ。
この先は吊り尾根と呼ばれる区間。道こそ、しばらくは水平移動のトラバース路ですが、ここら辺は早く突っ切ってしまったほうがいいです。
心からそう思いました。
岩壁に沿うように進んで行く。
7年前は前穂高岳のピストンだったので、ここの区間を歩くのは今回が初めてとなります。
そしてここら辺かポンコツ登山の本領発揮。水不足もたたって、ペースが一気に落ちる。
標高を落として、再び見上げる形となった奥穂高岳。
一見すると近そうにも見えるけど、これがまた遠かった……。
先ほどいた前穂高岳。
登り返す上に、あの山からさらに100m高くなるので、否が応でも登りが続く。
数時間前の岳沢小屋で水を補給し忘れたのが仇となり、ここら辺は水分を節約しながら登るハメになって完全にガス欠でした。
1つ1つの岩がでかすぎる。
遠目からだとどこをどう登るのかよくわからないですが、その場に立てば道は明瞭。
立ち止まっては景色を見ての繰り返し。
幸いなのは気温が歩くにはちょうど良い涼しさというところ。展望も恵まれていて、眼下には2日目に行く涸沢も見えました。
10月初旬、例年で言えば涸沢の紅葉がピークになる時期ですが、今年はだいぶ色づきが遅れている模様。
終盤には鎖場も再登場。
登る角度で言うと、ここら辺が本日一番だったかもしれません。
足場はしっかりしているので見た目ほどは難しくないですが、なんせポンコツなもんでもうバテバテ。。。
鎖場を超えてようやく山頂が見えた。
最後は緩やかな稜線ですが、この部分もどんだけ鈍行だったことか……
自分でも笑ってしまうくらい、超スローペースで進みました。
14時30分、何とか無事に奥穂高岳に登頂。
7年ぶり、人生2度目です。この山頂の祠だけはよく覚えてました。
登ってきた方面を振り返って見る。
右奥が前穂高岳ですが、やはりこちらの方が標高が高いので見下ろす形になります。
スタートの上高地からの高低差を考えたら、久しぶりにガッツリ登った1日です。下山後にひどい筋肉痛に苛まれたのは言うまでもない。
槍ヶ岳方面は残念ながらガスが出てきてしまって見えませんでしたが、無事に登頂できたということで充実した気持ち。
ここまで来ればあとは本日の宿である穂高岳山荘まで下るだけ。
ホッとした瞬間でもあります。
奥穂高岳の展望と言えば、やっぱりこちらか。
丸いドーム状の岩峰、北アルプスの荒くれもの・ジャンダルムでございます。
この日も残念ながら滑落死亡事故が発生してしまった危険度の高い岩山。登る際はくれぐれもお気を付けください。
奥穂高岳から穂高岳山荘に向かって下山。
しばらくは緩やかな岩場、山荘が迫ってくると鎖場やハシゴがある箇所に出るので、そこだけお気を付けください。
途中にあった、岩に突き刺さった古のピッケル。
これも7年前に見たもの。よく覚えてました。
こうして15時20分、穂高岳山荘に到着して1日目が終了。
テント泊ではなく小屋泊なので、ここまで来れば楽なもんです。
受付して飯食って寝るだけ。
就寝スペースもこんな感じで区切られているので安心です。
コロナ禍になってからというもの、素直に喜べないところではありますが、山小屋の生活が快適になったのは利用者にとっては有難いです。
事前予約や宿泊料金の値上がりはありますが、テント場も予約制になったし料金も値上がりしたことを考えたら、しばらくは小屋泊で良いかなと思ってしまいます。
夕方は雲が出てきたものの、夕暮れ時に一時的に晴れてくれて、綺麗な雲海と夕焼けの空を見ることができました。
久しぶりの3000m峰登頂。
心底疲れてぶっ倒れるように寝て1日目が終了。
2日目はこの時期の人気スポットである涸沢の紅葉へ。
【日程】
2022年10月2日~3日
【コースタイム】
・1日目
5:45 上高地バスターミナル
5:50 河童橋
6:10 岳沢登山口
7:45 岳沢小屋
10:45 紀美子平
11:45 前穂高岳
12:30 紀美子平
14:30 奥穂高岳
15:20 穂高岳山荘
コメント
みやっちさん お久しぶりです。
いやぁみやっちさんと最もお近づきになった7年前の9月に負けない晴天ですね。素晴らしい展望にも恵まれて\(-o-)/ こちらを拝見すると、あの日のことが鮮明に思い出されます。
あちこちでポンコツとか書かれてますが、そんなことはないでしょう? 生意気なことを言いますが(笑)、私は還暦までは「普通」でした(前穂ー奥穂縦走のときは58歳)
この間、しばらくぶりに奥多摩の川苔山に登りました。山頂からの展望など楽しかったですが、登りくだりとも、コースタイム+30分(-_-;) 私の山人生も最終盤かと。お時間あれば、眺めて笑ってください。https://4travel.jp/travelogue/11790920
ねもさん、お久しぶりです!
コメントありがとうございます。
7年前の登山を懐かしみつつ登りました。思えば季節もほぼ同時期でしたね。澄んだ秋晴れの下で今回も歩くことができました。
この日のポンコツっぷりは、何といっても途中の山小屋で水分を補給し忘れたことですね。登山ではやってはいけないうっかりだったので猛省です。
ねもさんも川苔山お疲れさまでした。秋の奥多摩は今年狙っていたのですが、どうにもタイミングが合わず行けそうにありません。
4トラベルの記録も後ほど拝見させていただきます!